第6話 正義の味方2
「まあそう言うわけで、着いて来ちゃったわけでちのよ」
シエルは町でのことを話し終えると、やれやれといった様子で、
「やあ、あんたがラルフか。で、そっちがブランだな。オレの名前はアッサム。でも町のみんなは
「何回見ても、男前でちわねえ」
シエルは
「オレが仲間になったからにはもう大丈夫さ。ファイヤースターでもなんでも、オレが守ってやるよ。なんせオレは、正義の味方だからな」
しかし、
「キミには申し訳ないが、ボクは人間が嫌いなんだ。身勝手で、傲慢で。ボクたち森の動物は、いつも人間たちに
「そうさ。ボクのお母さんも人間に殺された。人間は敵なんだ」
ブランも悔しそうに言った。
「なんだ、そうか。つまり、ラルフもブランもオレのことが恐いんだな?」
ウウウゥゥゥーーーッ。
今にも飛びかかる勢いで、
「なんだと?ボクはオオカミのリーダーだ。人間が恐くてリーダーなんかやっていられるかっ」
「わあぁっ、おっかねえ」
ラルフの剣幕に驚いて、
「噛み殺されちゃたまんねえよ」
枝の上で騎士はブツブツと独り言を言っている。
「どっちにしろ、人間と仲間になるなんて、ボクはごめんだよ」
ラルフは騎士からプイッと顔を背けると、シエルに向かって、
「町は避けて、遠回りでも山の中を行こう。シエル、進行方向はどっちだ?」
と尋ねた。
シエルが答えるより先に、騎士が口を挟んだ。
「ちょっと待った。オレがいれば、町の中を通るなんて簡単なことさ。なんせオレは、あの町の正義の味方、
「なんだよ、偉そうに」
ブランが騎士に突っかかった。
しかしステラはその言葉を遮るように、
「そうね。町を突っ切って行けるなら、ずいぶん近道になるわ。ここは騎士の力を借りた方がいいかもしれないわね」
と言ってラルフの方を見た。
「なるほど。ステラはどうやら、キミが仲間に加わることに賛成のようだ」
ラルフはそう言うと、しかし騎士を見ながらさらに言葉を続けた。
「だが、人間の足では、ボクたちのスピードに着いてくることはできないよ。移動に時間がかかるのは困るんだ」
するとさっきとは打って変わって、ステラも顔を曇らせて、
「そうねえ。確かにラルフの言う通りだわ。町を通るのはいいとして、その後もまだ道のりは長いわ。ごめんなさい、
と、申し訳なさそうに言った。
しかし
「ステラ、言ったはずだぜ、オレは
「すごいね。どこに行ったかわからなくなっちゃったよ」
ブランが目を丸くしている。
すると今度は、
「へへへっ、どんなもんだい。オレをなめてもらっちゃ困るぜ。この辺りの山は、オレの庭だからな。お手のものさ」
「なるほど。キミを少し見くびっていたようだ。じゃあこうしよう。みんなが賛成なら、ボクはキミが仲間に加わることには反対しない。だが、ボクはキミのことは信用しないよ。なぜなら、ボクは仲間を守りたいからね」
「おーし。じゃあ今日からオレも仲間ってことでいいよね。ね、ね、ね」
騎士はみんなの顔を見回してそう言うと、興奮して、ウヒョーッと声を上げた。
そしてまた木から木へと飛び移って、どこかに消えたかと思うと、全力で駆け戻ってきた。
「どこまでもお気楽でちわね」
シエルが呆れたように、騎士の上をグルグルと旋回した。
しかしブランは不安そうに、
「でもボクはやっぱり人間が恐いよ、ステラ」
とステラに向かって訴えた。
「ボクがついてるから大丈夫さ」
ラルフがそう言うと、ステラは、
「わたしには、そんなに悪い人とは思えないわ」
と言って、ブランに向かって微笑んだ。
こうして、何はともあれ、ファイヤースターを探す旅に、騎士が新たに加わることになったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます