第2話 ガジュマランのイベント
ガジュマルのファントーム『ガジュマラン』は、愛と癒しのパワーを自由に操る、不思議な力を持ったファントームだ。
そしてガジュマランは、ファントームたちが『愛や癒しの貢献』をしたときには、その貢献度を鑑定して、ミャムの評価書を発行するという役割も担っている。
ガジュマランの太い幹からは、数えきれないほどの枝が広がっている。
大地を覆う大きな傘のようなその姿は、まるでちょっとした森のようだ。
いつもガジュマランの周りには、鳥や虫や、妖精までもが集まってくる。
ガジュマランの枝葉の傘は、壮大な癒しの空間となっているのだった。
「やあ、みんな、集まってくれてありがとう。今から地球に向かって、愛と癒しのパワーを送ろうと思うのじゃ。手伝ってくれるか」
ガジュマランは集まったものたちを見回した。
集まったファントームたちは、みんな笑顔で頷いている。
「ありがとう。地球というのは、争いや悲しみが絶えない星なのじゃ。みんなの愛と癒しの力を結集して、美しく慈愛に満ちた地球に変わるように、我々も貢献しようじゃないか。」
ガジュマランの言葉に、ファントームたちは花びらやツルや葉っぱを揺らして応えた。
緑やピンクや黄色や青や、さまざまな色の風が巻き起こった。
風は、ファントームたちの間をやさしく吹き渡っている。
「さあ、愛と癒しの歌を歌いながらドレスを揺らして。みんなでこのイベントを楽しもうじゃないか」
ガジュマランの掛け声でファントームたちが歌い始めた。
「ルラララルラララチュリティブチュリティブ、、、」
チュリッピーが歌う。
「ルラララルラララガジユティブガジユティブ、、、」
ガジュマランの澄んだテノールも響き渡った。
「ルラララルラララキウィティブキウィティブ、、、」
キウィのファントーム、キウィナも歌う。
「ルラララルラララ、、、」
「ルラララルラララ、、、」
「ルラララルラララ、、、」
ファントームたちのドレスが歌にあわせてキラキラユラユラ揺れている。
どんどん声が大きくなって、どんどんドレスが揺れて揺れて、となりのファントームとつたを絡ませ、花びらをふれ合い、葉っぱをこすって音をならして、そこから巻き起こった光と風が空高く上昇していった。
そしてその光と風は、やがて光り輝く虹色の大きな玉へと成長していったのだ。
羽を羽ばたかせてその玉の周りをまわっているファントームたちもいる。
ガジュマランは大きく成長した玉を見て、もうこれでいいだろう、というように、枝を揺さぶってウンウンと頷いた。
そしてガジュマランは、背中についているクリスタルの大きな羽をゆったりと大きく羽ばたかせた。
すると羽からはまばゆいばかりの光の束が放たれて、虹色の大きな玉を包み込んだのだ。
ガジュマランはなおも何度も羽を羽ばたかせて、今度は上空が渦巻くほどの大きな風を送った。
眩いばかりの光に包まれた虹色の玉は、その渦に巻かれて、回転しながら、流れ星のように地球へと向かって宇宙を流れて行ったのだった。
「みんなありがとう。我々の愛は地球に届いて、きっと慈愛に満ちた星へと進化させてくれるだろう。さあ、評価書を受け取ってくれないか」
ガジュマランはそう言うと、参加したファントームたちに貢献度の評価書を手渡していった。
まだ色とりどりの光と風が漂う中で、ファントームたちがペチャクチャとおしゃべりを始めている。
「これで30ミャム集まったから、旅行に行ってみようと思うのよ」
「あら、私は新しいドレスが欲しいわ。さっきの虹色、ステキだったわよねえ。あんな色のドレスが着てみたいわ」
「いいねえ。ボクは今回はハートアクティベーターのチャージだな。もう残り少ないからね。」
他のファントームたちがおしゃべりするそばをすり抜けて、チュリッピーはミャムの交換所へと急いだ。
ミャムの交換所は山の麓にあって、白いユリのファントームのリーリヤが番をしている。
そこに評価書を持っていけば、ハートアクティベーターのチャージか、貯ミャムかを選ぶことができるのだ。
チュリッピーのハートアクティベーターは十分足りているから、今のところチャージの必要はない。
リーリヤのところへは、もうすでに955ミャムを貯ミャムしてあるから、この評価書の5ミャムを合わせれば、ちょうど1000ミャムになるはずだ。
チュリッピーは息を弾ませながら、リーリヤの小屋のドアを叩いた。
「あら、チュリッピーね。ガジュマランのイベントに参加していたのね。あなたが一番乗りよ。」
白いユリの姿をしたリーリヤは、5ミャムの評価書を確認して、中に招き入れながら言った。
「さあ、貯ミャムかしら?それともハートアクティベーターのチャージにする?」
「リーリヤさん、わたし、地球に行くの。転移するのよ。預けていた955ミャムとあわせて1000ミャムを引き出したいの。お願いします。」
チュリッピーがそう一気に言うと、リーリヤは笑顔で奥の部屋へと消えて行った。
しばらくして戻ってきたリーリヤの頭上には、オレンジに光るハート型の光のオブジェのようなものが浮かんでいた。
「1000ミャムともなると、ちょっと時間がかかってしまって、お待たせしてごめんなさい。じゃあどうぞこれを持って行ってちょうだいね。」
そう言うと、リーリヤはユリの花の頭部をチュリッピーに向かって振った。
すると、そのハート型のオレンジの光は、リーリヤの頭上からチュリッピーの頭上へと移動した。
「ありがとう、リーリヤさん」
チュリッピーが、エメラルドのドレスをユラユラと揺らしてお礼を言った。
「気をつけてね。地球はこの星と違って、愛だけじゃないと聞くわ。災いが降りかかりませんように」
そう言うと、リーリヤもピンク色の可愛らしいドレスを揺らして応えてくれた。
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