第五話 陸と謎の敵
「っ……陸、そいつから離れなさい!!」
と、聞こえてくるのは唯菓の声だ。
同時、陸の背中を駆け抜ける悪寒。
このままでは死ぬ。
なんだかわからないがやばい。
「っ!」
陸は咄嗟に地面を蹴り、前へと転がる。
そしてすぐさま立ち上がり、後ろ——先ほどまで男性が居た位置へと視線をやる。
するとそこにあったのは。
「何よ、あれ……黒い、蛇?」
と、聞こえてくる唯菓の声。
まさしく彼女の言う通りだ。
先ほどの男性を取り巻くように、黒い無数の蛇のような触手が蠢いているのだ。
しかもよく見ると、それらは男性から生えているようで。
「唯菓、見て! 触手がどんどん巻き付いて……助けないと!」
「っ、待ちなさい! うかつに近づくのは危険よ!」
と、陸の言葉に対して返してくる唯菓。
無論そんなことはわかっている。
しかし。
(どうにかしないとあの人が!)
あんな正体不明のものに巻き付かれて、無事で済むわけがない。
そうこうしている間にも、黒い触手はどんどん男性に巻き付いていき……やがて。
「が、ぎっ。ぐ、ぁああああああっ!」
と、繭のように重なった黒い触手の中から聞こえてくる男性の声。
次の瞬間。
ビキ。
ビキキキッ!
と、音を立てて崩れていく黒い繭。
そうして中から現れたのは。
「なに、あれ? 魔物…….それとも、怪人?」
と、いつの間にか隣までやってきていた唯菓の声。
彼女の言う通り、そこに居たのは魔物とも怪人とも言えない存在だ。
否。
見た目だけで言うのならば魔物だ。
体の色はどす黒く変色し、瞳が狂気のような赤色をしているが。
(あれは間違いなくゴブリンだ)
さっき見たばかりだから間違えようがない。
けれど、あんなゴブリンは見たことない。
(それに人間が魔物になるなんて、聞いたことない……聞いたことあるのは、人間が怪人になる事例だけだ)
なんにせよ。
注意するに越したことは——。
「何かと思えば…….お前みたいなのに、時間を取るほど暇じゃあないのよ、私は!」
と、陸の思考を断ち切るように聞こえてくる唯菓の声。
彼女はレベル2の力を生かし、凄まじい速度で黒いゴブリンへと向かっていく。
けれど。
「ダメだ唯菓! そのゴブリンは人間だ! まだ元に戻れるかもしれない!」
「無力化だけ、手加減はするわよ!」
と、陸の言葉に返してくる唯菓。
彼女は瞬く間にゴブリンの懐に入ってり、その額へと触れると。
「『エクスプロード』!」
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