第五百六十三話 空と狐と嫌な予感

「クーも笑顔でシャーリィも笑顔! お揃いだ!」


 と、言ってくるシャーリィ。

 彼女は尻尾をふりふり、空へと言葉を続けてくる。


「クー! クー! シャーリィ、実はリーシャから教わったことがもう一つあるんだ!」


「えと、なにかな? 出来る範囲でよければ、全然付き合うけど」


「本当か!?」 


「もちろんだよ。シャーリィには日頃お世話になってるからね」


「なんだか照れる! でも、シャーリィとっても嬉しい! やっぱりシャーリィは、クーのことが世界で一番大好きだ!」


 ふりふり。

 ぴこぴこ。


 と、ご機嫌な様子で動く狐尻尾と狐耳。

 ただ付き合うだけで、シャーリィがこんなに喜んでくれる。

 空にとっても、それはとても喜ばしい事だ。


 だがしかし。


(さっきリーシャから教わったって言ってたけど……あれが少し怖いんだよね)


 なぜならば。

リーシャは『口の端についたアイスペロ』を提案してきた人物。


そんな彼女がシャーリィに教えたこと。

それがまともなハズがあるだろうか……いや、ない。


 きっと、リーシャは乙女すぎるのだ。

 その結果、脳内回路がおかしくなってしまったのだ。


(そうだ。ここでシャーリィに付き合うことは、日頃のお返しって意味だけじゃない。リーシャに洗脳されつつあるシャーリィ……彼女を救うっていう意味もあるんだ!)


 などなど。

 空はそんな事を考えているが。


(まぁ、言ってリーシャはかなり常識人だし。シャーリィにそこまで変な事を教えるはずもないよね。うん……きっと大丈――)


「クー! これだ! 必要なのを買ってきた!」


 と、いつのまにやらシャーリィ。

 彼女は空の方へ、それを見せながら言ってくるのだった。


「お菓子で出来たスティックだ! 仲のいい男女は、これの両端をお互い加えて……こうやって、唇が当たるまで食べ進めるんだ!」

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