第五百六十四話 空と狐と嫌な予感②

「お菓子で出来たスティックだ! 仲のいい男女は、これの両端をお互い加えて……こうやって、唇が当たるまで食べ進めるんだ!」


 と、言ってくるのはシャーリィだ。

 なるほど。


(ダメだ……リーシャは思っていたより重症だ。シャーリィにこんなこと教えてる時点で、結構やばいよね!?)


 というか、空には一つ物申したいことがある。

 それは。


「いやいやいや! 仲のいい男女でも、そんなことしないからね!?」


「そんなことない! リーシャが言ってたし、クーの世界でも見たんだ!」


 と、言ってくるシャーリィ。

 彼女は尻尾をピンっと立、空へと言葉を続けてくる。


「仲がよさそうな男女が、スティックの端からチュッてするまでもぐもぐしてたんだ!」


「それ……どこでみたの?」


「テレビだ! クーの部屋にあるやつ!」


「…………」


 ドラマかアニメか映画か。

 いずれにしろ、シャーリィは恋愛もののそれらを見たに違いない。

 ようするに、フィクションを鵜呑みにしてしまったのだ。


(シャーリィはピュアだからな。そんなものを見たところに、友達からそういう知識を入れられれば信じちゃうか……まぁ、リーシャに悪気はないんだろうけど)


 というか、この場合。

 リーシャも本気で信じていそうなのが問題だ。

 まぁなにはともあれ――。


「っ!」


「クー?」


 と、首をかしげてくるシャーリィ。

 しかし、空には彼女へ言葉を返す余裕がない。

 なぜならば。


(なんだ、これ……背中に氷を入れられたみたいに、体が震える……ものすごく、嫌な予感がする)

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