第五百六十一話 空と狐とアイスクリーム②

「クー! クー! ペロってしていいか?」


 と、顔をずずっと寄せてくるシャーリィ。

 空はそんな彼女へと言う。


「いやいやいや! ダメでしょ、普通に! どう考えても、こんな人通りが多い場所でやることじゃないよね!?」


「人通りがなければいいのか? うーん……じゃあ、あっちだ! あっちの路地裏に行こう!」


「いや、ちょ――そういうことでもない、というか」


「む~!」


 と、頬を膨らませるシャーリィ。

 彼女はそのまま、空へと言ってくる。


「シャーリィにペロってされるの、クーは嫌いなのか?」


「嫌いではない、けど」


「じゃあ何も問題ない! シャーリィが、クーを綺麗にしてあげるんだ!」


 と、ついにシャーリィがペロッとしようとした。

 その瞬間。


 ポタ。


 空の口のアイス。

 それが垂れ落ちた。


「あ~~~~~~~! シャーリィが舐めようと思ってたのに!」


 と、言ってくるシャーリィ。

 彼女は狐耳をシュンっとさせ、空へと言葉を続けてくる。


「これじゃあクーを喜ばせられない……せっかく、リーシャから教えてもらったのに」


「……えと、ちょっといいかなシャーリィ」


「これじゃあシャーリィはダメな狐だ……」


「…………」


 シャーリィ。

 完全にダウナーモードだ。

 よほど、ペロってして空を喜ばせたかったに違いない。


 だがしかし。

 シャーリィの考えには、大きな間違いがある。

 故に、空は彼女へと言うのだった。


「僕はシャーリィと居るだけで、充分嬉しいよ」

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