第五百六十話 空と狐とアイスクリーム

「あ! 大変だ! クーの口の端っこにアイスがついてる!」


 と、言ってくるのはシャーリィだ。

 空はそんな彼女へと言う。


「え、あぁ……ありが――」


「ダメだ! 自分で取ろうとしたらダメなんだ!」


「えっと……」


 ダメだ。

 シャーリィが言っている事が、よくわからない。

 空がそんなことを考えていると、シャーリィは言葉を続けてくる。


「シャーリィは知ってるんだ! こういうのは、一緒に居る女の子が食べてあげるんだ! それで、シャーリィは狐だけど女の子なんだ!」


「シャーリィを女の子じゃないって思った事はないけどさ、どういう意味か教えてほしいんだけど」


「? そのままの意味だ! シャーリィが、クーの口の端についてるアイスを、ペロってするんだ!」


「…………」


 シャーリィ。

 いったいどこで、そんなラノベみたいな知識を得たのか。


 ひょっとしたら、日本でその手のアニメを見たのかもしれない。

 シャーリィはテレビもしっかり見るので、その可能性は充分――。


「リーシャが言ってたんだ! 今度クーにそういうことを、してあげたいって! 男の子はそういうのが好きだって!」


 などと言ってくるシャーリィ。

 なるほど。


(まさかリーシャが犯人だったとは………)


 これは空のイメージだが、リーシャは真っ白なイメージがあった。

 しかし、実はそうでもないに違いな――。


 ぷにぷに。

 ぷにぷにぷに。


 と、突如つつかれる空の頬。

 見れば、そこに居るのはにっこりシャーリィ。

 彼女は狐耳をピコピコ、空へと言ってくるのだった。


「クー! クー! ペロってしていいか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る