第三百七話 空と学生ヒーローの日常③

「そういえば時雨、さっき事件って言ってなかった?」


「事件……っ!」


 と、急に立ち上がる時雨。

 彼女は彼女にしては大げさな仕草で、空へと続けてくる。


「そうです、事件です兄さん! わたしとしたことが、状況に流されてしまいました!」


「え、えと……とりあえず落ち着いて、何が起きたのか説明して欲しいんだけど」


「兄さん、いいですか……落ち着いて聞いてください」


「その言い方だと僕のことに聞こえるんだけど」


「…………」


 ゆっくりと頷く時雨。

 となると。


(時雨が事件っていうほどのことを僕がしでかした? それとも、僕にしか解決できない何かが起きた……とかかな?)


 前者は心当たりがない。

 そのため、きっと後者に違いない。

 空がそんなことを考えていると。


「ヒーロー協会にお呼ばれしました……しかも明日です」


 と、言ってくる時雨。

 彼女はジトっとした瞳で、空を見つめてきながらさらに続けてくる。


「上は『とりあえずキミの班を、特に空くんを呼んで欲しい』とのことでした」


「…………」


「兄さん、何かしましたか?」


「…………」


 ヒーロー協会という言葉を聞いて、思い出してしまった。

 心当たりならある。

 どうして忘れていたのか。


(二回の非合法ヒーロー活動、きっとあれがばれたんだ)


 かといって、今更どうすることもできない。

 空は明日にそなえ、一人心の中でガクブルするのだった。

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