第二百九十三話 空と石の国④

「ねぇ、あんた達さ。さっきから相手が異能力者前提で話してるけど、本当にそうなの?」


 と、言ってくる胡桃。

 彼女は空と時雨を交互に見たのち、言葉を続けてくる。


「あたし達が探している相手が、相手を石にする異能を持っているのに異論はないわ。でも、後者のこの穴のこと……単純に人間じゃないから掘れたんじゃない?」


「なるほど……そうですね、それは盲点でした」


 と、なおのこと考えモードの時雨。

 彼女はふむふむと頷きながら、胡桃へと言う。


「穴は異能ではなく……自らの身体能力で掘った。梓さんの言う通り、怪人なら――例えばモグラ型の怪人とかならば、造作もないでしょうね」


「それにスカルボーンが非合法ヒーロー活動をしていたなら、怪人のターゲットにもされたと思うの」


「まぁ、怪人とにとっては目障りでしょうからね……なおかつ、スカルボーンはプロヒーローよりは潰しやすい」


「そう! つまり格好の餌食ってやつなんだからね!」


「二人とも、少し静かにしなさいな」


 と、これまで静かについて来るだけだった氷菓。

 彼女はここに来て、空の近くまでやってくると、そのまま彼へと言ってくる。


「空、この先に何かあるわぁ」


「何かっていった――」


「大きな空間と、いくつもの球体よ」


 相手が異能力者にせよ怪人にせよ、もう少し進めばすべてがわかる。

 空は一人そう思うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る