第二百八十六話 空とスカルボーン
噴水広場での出来事から数日後。
空たち天使班は、あれからもいくつかの任務をこなして。
そして今日。
「ついにこの日が来たんだからね!」
と、元気いっぱいと言った様子の胡桃。
彼女はヒーローボードにバンっと手を突いている。
そんな彼女の手の先にあるのは――。
●非合法ヒーロー集団 『スカルボーン』の捕縛
廃ビルを根城としているスカルボーンを無力化、捕縛の依頼。なお、スカルボーンは二十名以上の大グループのため、万全の体勢で挑むことが推奨される。
胡桃が最初から受けたがっていたやつである。
いよいよ時雨からのGOサインがでたというわけだ。
(とはいえ、油断はしないほうがいいよね)
なんせ相手は二十人。
しかも大半が……ひょっとすると、全員が異能力者である可能性もある。
おまけに、非合法ヒーローということは、戦闘経験もあるに違いない。
(でも時雨に氷菓さん、それに胡桃……こっちの戦力がちょっと過剰気味なのもた――)
「ちょっとあんた! なに難しい顔してるのよ!」
と、空の背中をバシンっと叩いて来るのは胡桃である。
彼女はハッとした様な顔で、空へと続けてくる。
「あんたまさか、ビビってるの!?」
「え、いや……」
「安心しなさいよね! もしもって時は、あたしがしっかり守ってあげるんだから! だ、だからその……あたしのことも、しっかり守りなさいよね!」
「はいはい……おしゃべりはそこらへんにしてください」
と、空と胡桃の会話を断ち切って来るのは時雨である。
彼女は真面目な様子で空達全員へ言ってくる。
「いいですか? 今回の任務は相手が怪人でないにしても、初の実戦というやつです。当然、命が危険にさらされることだってあります。基本は班長である兄さんの命令に従いますが、緊急時は皆さんプロヒーローであるわたしに従ってください……特に氷菓さん」
「あら、どうして私だけ念押しされるのかしらぁ?」
と、窓際で氷をつんつんしている氷菓。
時雨は露骨にため息つくと、そんな彼女へと言う。
「あなたが一番、考えていることがわからないからですよ」
「そうかしらぁ? 私としては梓胡桃の猪っぷりの方がわからないと思うわぁ」
「いえ、単純思考は御しやすいので……下手に頭がよくて、考えを読ませない人の方が危険だと、わたしは考えています」
「あら時雨、それは褒めてくれているのかしらぁ?」
「まぁ信頼はしていますよ。ただ、勝手な行動だけはしないでください」
と、相変わらず仲がいいのか悪いのか氷菓と時雨。
空がそんな二人の会話を聞いていると。
「ねぇ、空」
くいくいっと、袖を引っ張て来る胡桃。
彼女はポケッとした様子で、空へと続けてくる。
「なんだかあたし、ナチュラルにバカにされた気がするんだけど、気のせいよね?」
「…………」
「…………」
「気のせいじゃないかな」
「な、なによその間は!」
なにはともあれ。
こうして空達の天使班の初めての実戦が決まったのだった。
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