第二百八十五話 空と氷菓と狐娘④
時はあれから数分後。
現在、空はベンチに座らせたシャーリィと氷菓の前へと立っていた。
空は二人へ……特に氷菓へシャーリィとの出会いの説明をしていたわけである。
そして今。
ちゅうどその説明が終わったところだ。
「なるほどねぇ……まさか梓胡桃と時雨だけじゃなく、こんなところにも敵が居たなんてねぇ」
と、言ってくるのは氷菓である。
彼女は露骨にため息つきながら、空へと続けて言ってくる。
「っていうかおまえ、少しは自重したらどうなのかしらぁ?」
「え、なにをですか?」
「そういうところよ……あと、鈍感すぎるところを治さないと、いつか本当に酷い目にあうわよ……これは先輩から忠告ね」
「ヒョウカ! ヒョウカ!」
と、会話に交じってくるのは、尻尾をふりふりシャーリィ。
彼女はすっかり警戒心を解いた様子で氷菓へと続けて言う。
「ヒョウカがクーの友達で、シグレの友達でクルミの友達なら、シャーリィとも友達だ!」
「あらそう……私は意見を簡単に変える女が嫌いよ、おまえとか」
「うぅ~! さっきのは謝る! クーが危ないって思ったんだ! でも、ヒョウカがいい奴なら好きだ! シャーリィはヒョウカと仲直りしたい!」
ひょこひょこ。
ふりふり。
そんなシャーリィの狐耳と狐尻尾。
氷菓はそれらの魔力に負けたに違いない。
彼女はシャーリィへと、どこか照れた様子で視線を逸らして言う。
「勝手にすればいいんじゃないかしらぁ……」
「じゃあ勝手にする! 仲直りの印だ!」
ひし!
と、絶賛シャーリィに抱き着かれている氷菓。
彼女は何故か空をジトっと恨めし気に睨んだのち。
「帰るわぁ」
「え、異世界に行くの試すんじゃないんですか?」
「疲れたから帰るのよ。行けるのが確定していることを試しても、時間の無駄だもの」
と、氷菓は立ち上がるとさっさと歩いて行ってしまう。
というか。
「ひ、氷菓さん! シャーリィがくっついたままですって!」
この後、空はシャーリィを引きはがすのに苦労したのだった。
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