第二百三十二話 空はリーシャと出かけてみる③

(え、僕達……今まで理由なく二人そろってテキトウに歩いてたの?)


 いやいやいや、そんな訳はない。

 なんせ、昨夜リーシャは空と出かけたいと言った。

 ならば、きっと目標を定めているはずだ。


「えっと、リーシャ……もう一度聞くけど、どこか行きたいところがあって、そこに向かっているんだよね?」


「いえ、わたしはクウ様と歩くだけで幸せです。今日のわたしの目的をしいて言うならば、クウ様という尊きお方のお傍を、共に歩かせていただくことです」


 パァ~~~。

 と、後光でも差しそうな勢いのお祈りリーシャ。


「…………」


 空はまだリーシャとの関係は短い。

けれど、空は彼女のことを短い期間で十分に理解できたつもりだ。

 ようするに何が言いたいかというと。


(リーシャは本気だ。本気で行きたいところがないんだ……リーシャの目的は、僕と歩いてるだけで達成されているってことだ)


 嬉しいのだが、嬉しいのだが……うーむ。

 と、空がそんなことを考えていると。


「そうです! クウ様、どこか行きたいところはないでしょうか!」


 と、言ってくるリーシャ。

 彼女はお祈りモードをやめると、たたっと空の方へ近づいてきながら続けてくる。


「わたしはこうしているだけで幸せです! ですが、クウ様を行きたいところに案内できれば、もっと幸せです!」


「あるにはあるけど、付き合わせちゃっていいの? 誘ってくれたのはリーシャなのに」


「付き合わせていいです! わたしはクウ様に付き合わされるなら本望……だって、それはとても幸せなことですから!」


 ぐいぐい迫って来るリーシャ。

 空はそんな彼女に気圧されつつ、事前に考えていた行きたいところを言うのだった。


「じゃあ、スキル……技能書がたくさん売っている場所を見たいんだけど」

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