第二百三十一話 空はリーシャと出かけてみる②
「わっ!?」
と、聞こえてくる声。
見れば子供がバタンと地面に倒れている。
となれば、次にくるのは――。
「うわぁあああああああああああああんっ!」
こうなればもはや放置しておけるわけがない。
空はすぐさま子供のところに駆け寄ろうとする。
だが、それよりも早く。
「大丈夫ですか!? あ、膝が……すぐに治します、少しだけ我慢していてくださいね」
子供に駆けより、抱き起したのはリーシャである。
彼女は子供の膝に手を翳すと、回復魔法をかけはじめる。
すると子供の怪我は凄まじい速度で治り始め――。
「これで安心です。でも、もう人通りが多い場所を走ってはいけません……約束ですよ?」
と、子供のおでこを優し気につんつんするリーシャ。
彼女はまるで母親のように、少年の服をはたいて埃を落とすと。
「ほら、何か用事があるんですよね? お行きなさい」
子供はそんなリーシャの言葉にうなずくと、早歩きでさっていく――走っているかどうか微妙な判定ではあるが。
そして、それはリーシャも気が付いたに違いない。
「あっ! お姉さんとの約束を守ってください! ずるいです!」
そんなリーシャは少年に遠くから、あっかんべーされている。
まぁある意味平和な光景と言えるに違いない。
「何度も言うけど、本当にリーシャって優しいし偉いよ」
「何度も言いますけど、それはクウ様もですよ」
と、笑顔を向けてくるリーシャ。
空の中では自分などまだまだだと思う。
けれど、そう言ってもらえると嬉しいのは事実だ。
さて。
と一息、空はリーシャへと言う。
「ところでリーシャ。少し聞くのが遅れちゃったけど、今僕達ってどこに向かっているの?」
「どこへも向かっていません……わたしはただただ、クウ様の進むままに」
と、お祈りモードに入るリーシャ。
言っていることがよく理解できなかったのだが、つまりこういうことに違いない。
リーシャはこれまで特に目標なく歩いていた。
空はリーシャに行きたいところがあると思って、彼女について歩いていた。
つまり。
(え、僕達……今まで理由なく二人そろってテキトウに歩いてたの?)
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