第二百二十七話 空はリーシャと予定を立ててみる

「大丈夫、開いてるから入っていいよ」


「失礼します!」


 と、リーシャはとてとて空の方へとやって来る。

 そして、彼女は少し戸惑ったような仕草を見せた後、空の隣へ座り続けて言ってくる。


「あ、あの……クウ様、今日は申し訳ありませんでした」


「え、何が?」


「バルコニーでの出来事です。いきなりあんな扱いをされては、驚かれたでしょうし……その、迷惑でしたよね?」


 確かに驚きはした。

 空はヒーローを目指しているので、いつか人々から声援を受ける日が来るかもしれない。

 そんな期待はしてはいたが、今日突然……それも異世界で起きるとは思わなかった。


 けれど、リーシャの言い分は間違っているところがある。

 それは。


「迷惑なんかじゃないよ。むしろ嬉しかったよ」


「嬉しい……ですか?」


 と言って、ひょこりと首を傾げるリーシャ。

空はそんな彼女に頷きながら、言葉を続ける。


「あそこに居た人たちは、僕達にあんなに大きな声援を送ってくれた。っていうことは、あそこの人たちは僕達を認めて、期待してくれてるんだ」


 それを迷惑と考えるわけがない。

 そう考える人もいるかもしれないが、ヒーローを目指す空にとっては間違いないく――。


「ありがたいごとだよ。僕は人助けするのが好きだし、僕を頼ってくれるならなおさらね」


「クウ様はやはり、予言の通りの勇者様なのですね」


 と、瞳を閉じお祈りモードに入ってしまうリーシャ。

 空としてみれば、未だ自らが勇者という自覚はない。

 けれど。


(このファルネールの人たちが、魔王っていうのに苦しめられてるなら……あんなに多くの人が僕を頼ってくれるなら)


 勇者。

 ファルネールにとってのヒーローになるのもいいかもしれない。

 と、空はそんな事を考えるのだった。

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