第二百二十五話 空と仲間は希望になってみる

 王の後について行った先、辿りついたのはバルコニーだった。

 結論から言うと、空は王に嵌められたと言わざるを得ない。

 なぜならば。


「皆の者! 長きに渡る苦難の時をよくぞ耐えた! だがしかし、そんな日々も今日までである! 聖女リーシャに導かれ、勇者が降臨したからだ!」


 と、高らかに宣言しているのは王である。

 彼は空達の方へと手を翳してくると、更に言葉を続ける。


「彼等こそが勇者と、その仲間達である! 彼が勇者ヒナタクウ! 彼女が従者アズサクルミ! そして――」


「シャーリィだ!」


 と、一人ノリノリな様子のシャーリィ。

 きっと状況をしっかり把握していないに違いない。

 まぁシャーリィらしくていいのだが。


「彼女、シャーリィは獣人故奴隷身分ではある! しかし、彼女は勇者の仲間である! 見てわかるように心根も穢れない!」


 と、王は言葉を更に続ける。


「勇者クウと従者クルミを称えるのはもちろんだが、従者シャーリィへも同様の感情を向けてもらいたい。彼女への侮辱は、儂への侮辱と心得よ!」


 さて、絶賛いい事を言ってくれている王。

 どうして空がこんな王に対し、嵌められたと思ったのか。

 その理由は簡単だ。


 理由を説明するために、やや遅い状況説明をしよう。

 現在、空達はバルコニーに居る。

 これは別にいい……眺めがよくて最高だ。


 だがしかし。

 バルコニーから下を見ると、そこには大量の人が集まっているのだ。

 王の話が確かならば、エクセリオンの人々全員がいるとのことだ。


 そんな中。

 王は空達に手を翳し、大声で再び言い放つ。


「勇者クウを称えよ! 従者クルミを、従者シャーリィを称えよ! 彼等こそ勇者! エクセリオンの希望! 魔王を打ち滅ぼす希望であると心得よ!」


「「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」」」」


 と、王に呼応するかのような人々の声。

 彼等は――。


「勇者! 勇者! 勇者!」


「勇者クウに栄光あれ! エクセリオンに栄光あれ!」


「シャーリィとクルミに女神の祝福を!」


 などなど、バルコニーにまで届く熱気を放ち始める。

 問題とは要するに。


(あれ、なんかすごい大事になってる……っていうか、この勢いだとファルネール中に僕の名前が届いてしまう気が)


 空がそんなことを考えている間も、歓声は決して止まらない。

 今日この時、空はファルネールを救う勇者として、人々から正式に認識されたのだった。

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