第二百二十四話 空と仲間達と王様と②
「おぬし達は何がよいのじゃ?」
と、言ってくる王。
空はそんな王へと言う。
「いや、褒美なんていりませんよ」
王の褒美となれば、どんなものでも大抵はもらえるに違いない。
しかし、ここで受け取るのは何か違うように思うのだ。
「僕はリーシャの頼みを聞きたいから聞いたんです。自分がしたいようにしただけなのに、褒美っていうのは……」
悪いどころの騒ぎではない。
それが一国の主からとなれば、なおさらである。
そして、空のそんな考えは胡桃とも同じだったようで――。
「あたしも大丈夫です。褒美に値すべきものは、すでにリーシャからもらってますし」
と、そんな胡桃の言葉。
彼女が言っているのは『勇者の力』の事に違いない。
確かにその通りだ。
空からしても、あの力は充分褒美に値する。
やはり、その上王から褒美をもらうのはおかしすぎる。
と、空が心をなおさらに決めた時。
「褒美と言ったのが悪かったようじゃな」
と、言ってくる王。
彼は空と胡桃に順に視線を向けて来ながら、続けて言ってくる。
「リーシャを救い、勇者という希望が現れたこと……それに対するお礼がしたい。いや、これでも堅いかの……ふむ、何と言えばいいのか」
「王様はクウ様たちに、感謝の気持ちをわかりやすい形で伝えたいのですよね?」
と、会話に入って来るのはリーシャである。
王は「まさにその通り」と言った様子で数度頷き、空達へ言ってくる。
「リーシャは娘だと思って育ててきた。おぬしはそんなリーシャを救ってくれた……何かもてなしをしなければ気がすまないのじゃ……どうか、我儘を聞くと思って頼む」
「そんな頭を下げないでくださいよ!」
王にこんな事をされては、もはや断るわけにはいかない。
それに、こういう場合断りすぎるのも失礼にあたると聞いたことがある。
「わかりました! 褒美は何か考えておきます! 胡桃もそれでいいよね?」
こくこくこく。
と、焦った様子で空に頷いて来る胡桃。
きっと、空と同じく王の行動に焦っているに違いない。
「というわけなんで、とにかく頭をあげてください!」
「ふむ、では褒美は受け取ってくれるのじゃな」
と、ニカっと笑顔を浮かべてくる王。
空はこの瞬間とある事を思った。
それは――。
先ほどの行動は計算していたのではないか。
あぁすれば、空達がこれ以上断ってこないとわかってのことだったのではないか。
だとするなら、さすがは王。人心の操作に長けているとしかいえない。
と、まぁ空がそんな不信な瞳を王に向けていると。
「褒美の話もまとまったところで、そろそろ本題に入ろう。着いてきてほしい」
王は空達にそう言ってくると、席を立って歩いて行ってしまうのだった。
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