第百五十八話 空と胡桃は展望台にて②

「今は嫌いじゃないよ。胡桃は嫌なところもあるけど、それの倍以上いいところもある。それに一緒に居ると、なんだかんだ色々あって面白いしね」


「そ、よかった。あたしも今は、空のこと嫌いじゃないわ」


 と、言ってくる胡桃。

 正直、予想外である。


(あれだけ僕に物理攻撃したり、恥ずかしがらせてバカにしてたのに、嫌いじゃなかったんだ……でも、なんだか嬉しいな)


 嫌われているより、嫌われていない方がいい。

 それは当然ことだ――相手が胡桃ならばなおさらである。


(あれ……どうして僕、胡桃ならなおさらって思ったんだ?)


 と、空は一瞬そんな事を考えるが。


「それでね空、ここからが本題……ちゃんと聞いてよね!」


 胡桃のそんな声により、空の思考は断ち切られる。

 彼女は突然、空の手をぎゅっと握って来ると、そのまま言ってくる。


「あんたバカで鈍感そうだから、ハッキリ言わせてもらうわ! 覚悟はいい? よかったら言ってよね!」


「え、うん……い、いいけどなに!?」


「あ、あたしは……あたしは!」


「う、うん!」


「日向空! あ、あんたの事が……あんたの事が世界で一番す――」


 と、その時。

 突如、空の視界が光に包まれ、世界の音の一切が聞こえなくなる。


 そして、空が次に目を空けた時。

 目の前にいたのは――。


「あ、あなたが……勇者様?」


 そんな事を言ってくる真っ白い少女。

 腰まで伸びた白髪と、美しい碧眼。純白のドレスの様な修道服を着た少女だった。

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