第百五十七話 空と胡桃は展望台にて
時はあれから数分後。
空と胡桃は丘の上公園にある展望台へやってきていた。
なお、展望台と言っても、都会にあるタワー状のものではない。
せり出した高台から、景色を見通せるというほぼ天然もののやつだ。
「空! ほら、みなさいよ! すっごく綺麗なんだから!」
と、展望台からの景色を見てはしゃぎまくっている胡桃。
こういうところだけ見ると、普通の可愛らしい女の子である。
普段の凶暴性が嘘のようだ。
空がそんな事を考えていると。
「ねぇ、空……ちょうどいいから、ここで真面目な話をするわ」
胡桃はとてとて、空の前までやって来る。
彼女は先ほどとは異なり、至極真面目そうな様子である。
空はそんな彼女へと言う。
「急にどうしたの? ひょっとして、さっきの件かな?」
胡桃は何だかんだで正義感が強い。
であるならば、時雨と同じく空の非合法ヒーロー行為を怒って――。
「違うわ……これからするのは、もっと大事な話なんだから!」
と、空の思考を断ち切る胡桃の声。
彼女はいつの間に付けたのか、空がプレゼントしたネックレスを握りながら、言葉を続けてくる。
「ねぇ、空……あたしは最初、あんたの事が大嫌いだったの。気がついてた?」
「いや、知ってるよ。正直、僕も胡桃の事が好きじゃなかった。うるさいし、やたらとバカにしてくるし」
「はは……そっか。じゃあ、今はどうかな? 今でもあたしのこと……嫌い?」
「今は――」
空はここで考える。
空は胡桃のことをどう思っているのか。
(あれ……そういえば、いつの間にか胡桃のこと嫌いだって、思わなくなってるな。なんでだろう? 居るのが当然というか、慣れちゃったのかな)
今の空にとって、胡桃は時雨と似たようなポジションだ。
少し口うるさい妹というか、姉というか……そんな感じである。
故に空は胡桃へと言うのだった。
「今は嫌いじゃないよ。胡桃は嫌なところもあるけど、それの倍以上いいところもある。それに一緒に居ると、なんだかんだ色々あって面白いしね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます