第百五十一話 空と胡桃とヒーロー見参③
「私の名は筋肉! 筋肉は私! そう、筋肉ヒーロー『マッスル』! ここに見参!」
と、名乗りを上げるマッスル。
それとほぼ同時。
「ひ、ヒーローだ!」
「た、助かるぞ! 俺達助かるぞ!」
至るところから聞こえてくる歓声。
だが、マッスルはそれに至極冷静な様子で返す。
「応援ありがとう! だが、怪人と一対一で戦う以上、私が勝つとは限らない! 君たちは他のヒーローに要請を! 逃げられるものは逃げてくれ……私の筋肉が漲っている間に!」
その直後。
マッスルとボーガンの戦いは始まったのだった。
●●●
「ぐっ……は――」
と、膝をつくマッスル。
今ではすっかり筋肉もしぼんでしまっている。
マッスルのために言うが、彼は強かった。
空が直接見た限り、マッスルはレベル3の時の空に匹敵する力を持っていた。
だが。
(ボーガンも似たような力の持ち主な上、相性が悪かった……)
ボーガンは終始距離を取り、遠距離から砲丸を投げる戦法を取っていたのだ。
しかも。
「わ、私でなく一般人を狙うとは……それほど美しい筋肉を持つ者として、プライドはないのか!」
「ぐはははっ! バカが! 筋肉は効率的に人を殺すための道具なんだよ!」
と、そんなマッスルとボーガンのやり取りからわかる通りである。
ボーガンが投げた砲丸から、マッスルが人々守る。
その度に、マッスルは怪我を増やしていった。
結果が今のこの状況である。
けれど。
「うぉおおおおおおおおおおおおっ! 唸れ筋肉! 燃えろ筋肉!」
マッスルは諦めていなかった。
彼は立ち上がり、再び筋肉増強の異能 『ミスターマッスル』を発動させる。
そして、そんな彼は怪人へと言う。
「我が名はマッスル! 最後の瞬間まで、人々を守る至高の筋肉であり続ける!」
「ぐはははははっ! 立っているのがやっとの分際で!」
と、怪人の言葉通りだ。
そこからの展開は一方的だった。
怪人がマッスルに砲丸をぶつけ続けるという、最悪な展開。
(っ……ごめん、時雨。やっぱり見てられない!)
これ以上、怪人の攻撃が続けばマッスルは死んでしまうに違いない。
故に空は胡桃へ言うのだった。
「胡桃、買い物袋……一個もらっていいかな?」
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