第百四十九話 空と胡桃とヒーロー見参
「なんかあの人様子が……まさか、怪人っ!」
と、言ってくる胡桃。
空が彼女の視線の方向――喫茶店の外を見てみると、そこに居たのは。
身体を不自然に痙攣させるロングコートの帽子を被った人物。
彼の身体はみるみる膨らんでいき、あっという間に。
「ぐはははははっ! 俺様の名はボーガン! 地球に来て砲丸投げに目覚め、砲丸投げの真理に至ったもの!」
全身筋肉、身長三メートルほどの怪人に変貌する。
そんな怪人は更に続ける。
「矮小な人間共に、砲丸投げの本当のやり方を教えてやる!」
直後、響いて来る人々の悲鳴。
怪人が近くの人に砲丸を投げつけたのである。
投げつけられた人は倒れ、ピクピクと痙攣してしまっている。
途端に悲鳴が巻き起こる店内。
店員はテーブルの下に身を隠すように指示をしているが。
(まずいな……この状況じゃ冷静にそんなこと聞いてくれる人なんて……)
それに場所も悪い。
常識的に考えれば、このショッピングモールにも対怪人シェルターはあるに違いない。
けれど商業施設のシェルターは、店舗ごとにあるわけではないのだ。
(パンフレットによると、一番近いシェルターは……っ! ダメだ、あの怪人の傍を通らないと行けない場所に――)
「空……か、怪人が……ど、どうしよう!」
と、言ってくるのは胡桃である。
やはり彼女は怪人が怖いのか、以前ほどではないが震えてしまっている。
空はそんな彼女へと言う。
「大丈夫、今がとにかく店員さんの指示に従ってテーブルの下に――」
と、空が最後まで言葉を続けようとした瞬間だった。
「待て!」
聞こえてくる声。
その声の持ち主は、一人悠然と怪人の近くへ歩み寄ると。
「その悪行、この私が許さない!」
マッスルポーズをとるのだった。
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