第百四十六話 空と胡桃は買い物してみる

 結論から言うと、ネットの情報は嘘だった。

 少なくとも、服を見たら褒めるというくだりは完全に嘘だ。

 空がそう判断した理由は簡単である。


「ねぇ、胡桃ごめんって!」


「ふんっ!」


 と、ツンケンているのは胡桃である。

 彼女がこうなった理由――それこそが先の理由にもあたる。


『ねぇ、空! この服、どうかな?』


『似合うよ!』


『これは? 空ってこういうの好き?』


『似合うよ!』


 などなど。

 これと似たような会話を二十回ほど繰り返したところ。

 胡桃がぶちぎれた――理由は不明である。


(あーもう、これどうしようかな……せっかく買い物来たのに、これじゃあ胡桃にも悪いよね。なんとか機嫌を直す方法……直す方法は……っ!)


 と、空はここでとあることに思い当たる。

 それは昔、時雨と喧嘩した時に行った仲直り方だ。

 空はそれを実戦するために、胡桃へと言う。


「あ、あのさ胡桃。ちょっと僕トイレに――」


「勝手にしなさいよね! 空のバカ! 鈍感男!」


「えっと、じゃあ行ってくるから……ここで待っててね」


「あっそ! さっさとしなさいよね!」


 と、なおもブちぎれモードの胡桃。

 空はそんな彼女を一人残し、今見ている店を出るのだった。

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