第百四十四話 空と胡桃は移動中

 時はあれから数時間後の昼前。

 現在、空と胡桃は二人でバスに揺られていた。


「あ、空! 見なさい、海よ! 海が見えるんだからね!」


 と、窓側の席から外を見ながら言ってくる胡桃。

 彼女は更に続けて言ってくる。


「長期休暇とかにみんなで海に行くのもいいわね! ねぇ、あんたって泳げる?」


「泳げるけど、あんまり海で泳ぐのは好きじゃないかな」


「どうして? しょっぱいから?」


「いや、サメとかが居そうでさ……なんかほら、足元から襲われたら怖いし」


「ぷっ……ちょっと――」


 と、ジタバタし始める胡桃。

 彼女はひとしきりお腹を抱えて悶絶した後、空へと言ってくる。


「あんたそれだけ強かったら、サメとか怖がる必要ないでしょ?」


「そういう怖さと強いのは関係ないよ。サメとかゾンビとか幽霊とか……なんか強さと関係ない次元の怖さを持ってるよね」


「あーわかるかも。っていうかあんた、ホラーものとかパニックものとか好きなの?」


「嫌いではないかな。暇なときにパソコンつけて、垂れ流してる感じ」


「じゃあ今度、あたしのおすすめ見なさいよね!」


 などなど続く平和な会話。

 胡桃とは喧嘩ばかりしていたイメージなので、すごく良い事だと思う。

 と、空が考えていたその時。


「あ、もうすぐ着くんだからね!」


 言ってくる胡桃。

 空はここでとある事に気が付き、それを彼女へと問う。


「すごい今更だけどさ。今からどこ行くの?」


「はぁ? あんたバカじゃ――言ってなかった?」


「多分だけど、言ってない気がする」


「え、えへへ……ま、まぁあれよ! サプライズ! 着けばわかるんだからね!」


 と、胡桃はあまりにも苦しすぎる事を言ってくるのだった。

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