第百四十三話 空と胡桃の上機嫌
時は土曜日の朝。
場所は学食の一角。
「くーう♪ 今日は何の日か覚えてる?」
と、言ってくるのは胡桃である。
彼女はケモ娘なら尻尾でも振っていそうな勢いだ。
空はそんな彼女へと言う。
「買い物に行く日でしょ? 大丈夫、ちゃんと覚えてるよ」
「えへへ、さすがは空なんだから! はいこれ、あーん♪」
胡桃はそう言って、空の口に卵焼きを押し付けてくる。
彼女の奇行はもはや日常茶飯事であるため、慣れはしてきた。
しかし。
『おい、あいつらまたやってるぞ』
『朝から見せつけるとか、さすがに舐めてねぇか?』
『あいつワーストだし、今度囲んでやっちまうか?』
『やめとけって、あいつバケツの中身かもしれないんだぞ。それに女の方は序列十位だ』
聞こえてくる周囲の声。
これだけはいつまで経っても慣れない。
と、空がそんな事を考えていると。
「ジー……」
胡桃が空のことを見てきている。
それも無言で、頬を心なしか紅潮させて。
(なんだろう……ずっと見られると、すごく食べにくいんだけど)
空はそんなことを考えながらも、ウインナーを口へと運ぶ。
すると。
「……えへ♪」
と、空がウインナーを口に入れたタイミングで、幸せそうな表情をする胡桃。
その後も彼女は空に合わせて、「ジー」からの「えへ」を繰り返し続ける。
「え、えっと……胡桃、どうしたの?」
「ん? あんたが幸せそうに食べるからあたしも――っ、いいから早く食べなさいよね!」
言ってくる胡桃。
空は彼女の謎行動にもんもんとしながら、食事を進めるのだった。
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