第百三十七話 空と胡桃の秘策・続③
あれからも空と手を繋いだ胡桃は、ひたすら魔物を倒し続けた。
そして現在。
「い、いいから傍に居て! 絶対に傍にいなさいよね!」
と、言ってくる胡桃。
彼女は空の手を放し、一人でスライムと向かい合っているのだ。
…………。
………………。
……………………。
そして、胡桃とスライムが数秒見つめ合った後。
ついにその時が来た。
「あ、あんたになんかに負けない……い、『イージス』!」
と、胡桃がスライムへ攻撃を放つ。
その攻撃はゴブリンの時と異なり、しっかり発動したに違いない。
「や、やった……まだ少し怖いけど、動けなくなったりはしなかったんだからね!」
と、万歳する胡桃。
そう、彼女はついにトラウマが出ている状態で、魔物を倒すことに成功したのだ。
まだ、胡桃が肝心の怪人と戦えるかは不明だ。
けれど、これは大きな一歩に違いな――。
「クー! クルミが!」
と、聞こえてくる慌てたシャーリィの声。
空だって気がついている――胡桃の身体がふらふらと揺れているのだ。
「胡桃!」
空はすぐさま胡桃に駆けより、彼女の身体を支える。
するとはやりというべきか、力なくよりかかって来る胡桃。
彼女はそんな状態のまま、空へと言ってくる。
「あ、あはは……なんだか、力抜けちゃった」
「大丈夫なの!? また体調悪くなったんじゃ――」
「体調よくはないけど、これは違うんだから……本当に、安心したら力抜けちゃっただけ」
「それならいいけど、無理だけはしないでよ?」
と、空の言葉に対し、頷く胡桃。
彼女は「はいはい」と言った後、更に続けてくるのだった。
「ねぇ、空……今日は本当に、ありがとね」
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