第百三十四話 空と胡桃の問題点③

 胡桃の話をまとめるとこうなる。


 まず大前提として、胡桃は怪人にトラウマがある。

 それ故、怪人と戦っていると次第に震えが止まらなくなるとのこと。


 そして今回の場合。

 胡桃は魔物と戦っていると、怪人ほどでないにしろ、トラウマが出てしまうのだ。


 これは空の予想になってしまうのだが。

 おそらく胡桃の中では人外=怪人という定義になっているに違いない。

 けれど、空としては一つ疑問がある。


「シャーリィも人間じゃない! 胡桃はシャーリィが怖いのか?」


 と、シャーリィの胡桃に対する質問。

 空の疑問とはまさしくそれである。

 そして、胡桃はそんなシャーリィへと言う。


「シャーリィは狐耳と狐尻尾が生えてるだけで、ベースはどう見ても人間じゃない! あたしがダメなのは、露骨に人外だけなんだから!」


「じゃあシャーリィは大丈夫なのか?」


「だからそう言ってるじゃない! あたしは大丈夫だから、安心しなさいよね! まぁ、シャーリィが半ケモだったら厳しかったかもだけど」


「半ケモってなんだ? シャーリィは半ケモ知らないぞ!」


「べ、別に気にしなくていいんだからね!」


 と、なにやら照れた様子で話しを打ち切る胡桃。

 空はそんな彼女へと言う。


「それで胡桃、この後どうするの? やっぱり魔物と戦うのは危ないし、胡桃のトラウマのこともあるし……とりあえず今日はゆっくり休んで――」


「はぁ!? あんた時々本当にぬるいこと言うわね!」


 と、こちらに振り向く胡桃。

 彼女はキっと空を見つめながら続けてくる。


「これは、むしろチャンスよ! 魔物で怪人と同じようなトラウマが出ると言う事は、魔物相手にトラウマ克服の訓練をすれば……」


「怪人へのトラウマがなくなる?」


「そう! さすが空ね! 冴えてる時は冴えてるじゃない!」


「でもさ、急に戦えなくなったら危ないよ? さっきのゴブリンもギリギリだったよね?」


 空が言っているのはつまり、タイミングの問題である。

 例えば、先のゴブリン戦後――あの時に起きた胡桃の硬直。

 もしあれが戦闘中に起きていれば、胡桃は確実に危険な状態に陥っていた。


 やはり、胡桃が魔物と戦うのはリスクが高すぎる。

 と、空がそんな結論を出しかけたその時。


「あたしに秘策があるんだからね!」


 胡桃はそう言って、空に手を差し出してくるのだった。

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