第百三十三話 空と胡桃の問題点②

 一匹目のゴブリン。

 二匹目のゴブリン。


 倒しては探し、倒しては探し、倒しては探し。

 胡桃はゴブリンを求め彷徨う幽鬼の如き勢いで、ゴブリンを倒していく。


そして、ちょうど十匹目のゴブリンを倒したその時。

胡桃に見るからにわかる異変が起こる。


 ピタッ……。


 と、ゴブリンを倒した体勢。

 すなわち、拳を前に突き出した体勢のまま止まったのだ。

 これまではガッツポーズしたりしていたことから考えるに、明らかにおかしい。


「胡桃、どうかしたの?」


 空はそんなことを考えながら、胡桃へと近づいて行く。

 そして、彼が彼女の顔を見た時、それに気がついてしまった。


「っ……顔が真っ青だよ!? まさか毒でも受けたの?」


 ゴブリンは毒をもって居る個体もいる。

 空が見た限り、胡桃はダメージ受けていなかったが、見落とした可能性もある。


(っ……やっぱり、胡桃を魔物と戦わせるのは危なかったんだ!)


 とんでもないミスをしてしまった。

 けれど、今は後悔している場合ではない。


「シャーリィ! 胡桃の様子がおかしいんだ! 多分ゴブリンの毒に――」


「ま、待って……」


 と、ようやく拳を下ろす胡桃。

 彼女は蒼白な表情のまま、身体をぷるぷる空へと言ってくる。


「ど、毒とかじゃないから、大丈夫だから……そ、傍に居て」


「で、でも」


「お、お願い……空」


 胡桃の様子は明らかにおかしい。

 そんな彼女の頼みならば仕方がない。


 空はシャーリィに目で『大丈夫』と合図を送った後、胡桃の言う通りにする。

 そして、しばらく経った後。


「なんか、急に怖くなったの……」


 と、少し落ち着いた様子の胡桃。

 彼女は空へと続けて言ってくるのだった。


「最初は大丈夫だったんだけど、しばらくしたら急にゴブリンが怪人に思えてきて……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る