第百二十六話 空はジョブについて学んでみる
「ふぅ……酷い目にあった」
「お疲れ様です、クウさん!」
と、言ってくるのはお姉さんである。
彼女は空へ冒険者カードを渡しながら言ってくる。
「まぁレベル4となれば、英雄に片足突っ込んでるレベルですからね。これも有名税ってやつですね……これからクウさんの名前、きっと知れ渡りますよ!」
「僕的にはあんまり知れ渡って欲しくないんですけど……」
「名前が知れるのはいい事ですよ! 英雄アルハザードさんはもちろんのこと、最近だと聖女リーシャ様も有名ですね!」
「聖女リーシャ様、ですか?」
「ですです! 魔王との戦いの最前線で、兵士たちを癒してくれてるそうですよ! その回復能力もさることながら、勇者を見出すという特殊な力があるとか」
当然ながら聞いたことのない名前だ。
それにしても魔王と聖女とは……当然ながら、異世界全開の単語である。
と、空がそんなことを考えていると。
「クウさん! クウさん! 話は変わるんですが!」
聞こえてくるお姉さんの声。
彼女は空へと続けて言ってくる。
「そろそろジョブを決めた方がいいと思います!」
「ジョブ、ですか?」
「あれ、ひょっとしてご存じないですか?」
そういえばジョブというものは意識してなかった。
この機会に尋ねるのもいいに違いない。
と、空はお姉さんの質問に肯定を示す。
すると彼女は嬉しそうに説明をしてきてくれる。
「ジョブを取ると、そのジョブに応じた技能に補正がかかるんですよ! 例えば剣士なら剣技といった感じで! クウさんならそうですね……はい」
「え、どうしたんですか?」
「すみません……レア技能と数々と、いろんな種類の技能を無作為に取得されていたので、思わず言葉に詰まってしまいました……主にレア技能で」
ようするに、空には『これだ!』と当てはまるジョブがないに違ない。
剣技や拳技、そして魔法などなど、一貫性がないのだから当たり前だが。
と、空はここでふと気になったことを、お姉さんへと尋ねる。
それは。
「アルハザードさんのジョブはなんなんですか?」
「あーあの人はわからないですよ!」
と、お姉さん。
彼女は難しそうな顔で続けてくる。
「本人はジョブ『魔剣士』って言ってるんですけど、冒険者カードのジョブの欄にエラーが出ちゃってるんですよね。この前拝見させていただいた時、黒い靄がかかっていて……」
「そうなんですか。できたらアルハザードさんのジョブを知りたかったんですけど、それなら仕方な――」
と、空がそこまで言ったその時だった。
「ちょっと、それどういうことよ! もう一度言ってみなさいよね!」
「ふ、ふぇぇ~~~……ぼ、暴力反対ですぅ~~~!」
「クルミ、落ち着かないとダメだ! それ以上やったら受付の人の頭がもげる!」
と、聞こえてきたのはそんな声だった。
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