第百十九話 空と胡桃は武器を選んでみる

 時はあの後。

 場所は件の武器屋。


「すごい! 盾よ、盾! 本物の盾があるんだからね!」


 と、盾が立てかけられている棚の前に居るのは胡桃である。

 彼女は様々な盾を持ったり、撫でたりしながら空へと言ってくる。


「やっぱり武器にするなら盾よね! 守れるし、殴れるし、盾が最強なんだから! 空もそう思うでしょ?」


「いや、僕が胡桃だったら盾は選ばないかな」


「はぁ? あんたいちいち水差すわね!」


「だってさ、胡桃の異能は盾を作る異能だよね? 武器を盾にする意味ないでしょ」


「クーの言う通りだ!」


 と、空に続くのはシャーリィである。

 彼女はこくこくと頷きながら、胡桃へと言う。


「シャーリィはクーから、胡桃の異能は攻撃も防御も出来るって聞いた! だから、メインの武器はいらないと思う!」


「つまりどういうことよ? まさかナイフとか買えって言ってるの? 絶対に嫌なんだからね! 異世界に来たのなら、剣や盾……相場はそう決まってるんだから!」


「ナイフはきっと胡桃に合わないからおすすめしないぞ!」


 そんなシャーリィの言葉に対し、「え、そうなの?」と言った様子の胡桃。

 シャーリィはそんな彼女へと笑顔で続ける。


「そうだ! ナイフは繊細で素早い動きが求められるから、大雑把そうなクルミには向いてないんだ!」


「…………」


「きっと、クルミに一番向いてるのはハンマーだな!」


 と、悪意はないに違いないシャーリィ。

 胡桃もそれはわかっているのか、ぷるぷるしているが何も言わない。

 それどころか。


「ふ、ふーん……そ、そう。お、大雑把で繊細じゃないあたしには……な、なにがおすすめと思ってやがるのよ?」


 と、比較的大人な対応の胡桃である。

 シャーリィはそんな彼女へ、棚からとった武器を差し出すのだった。

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