第百十八話 空とシャーリィは胡桃をもてなしてみる

 結局、胡桃がどうして異世界にいけるようになったのか。

 それがわからないまま数日が経った。


 さて、そして現在。

 時は朝、場所は異世界 『ファルネール』。


「へー、やっぱり異世界って感じがするわね! ほら、あっちに犬耳つけてる人がいるし!」


「クルミ、人を指さすな! バレたら怒られるぞ!」


 と、聞こえてくるのは胡桃とシャーリィの声である。

 要するに現在、空とシャーリィは胡桃を案内しているというわけである。

 もっとも、目的の場所があるわけではないので、なかば散歩に近いが。


『これからは、あたしも異世界に行くから色々紹介しなさいよね!』


 と、数日前に言ってきた胡桃。

 それがそもそもの始まりだ。


「ちょっと空! あれみなさいよ! 武器屋よ、武器屋!」


 と、空が考え事をしていると言ってくる胡桃。

 彼女は空の服をくいくいしながら続けてくる。


「まずはあそこに行くんだからね!」


「え、武器屋に行くって……胡桃は異世界で戦う気なの!?」


「はぁ!? あたしも冒険者になって、レベルの概念を手に入れるに決まってるんだから! あんたバカでしょ! ほら、シャーリィはあたしと一緒にいくわよ! 空も早くついてきなさいよね!」


「あっ……クー! シャーリィはクーと歩きたいのに!」


 と、徐々に遠ざかっていくシャーリィの声。

 彼女はずるずると胡桃に引きずられて行ってしまう。

 空はそんな光景を見ながら考える。


(胡桃が冒険者に、か)


 忘れがちだが、胡桃は序列十位だ。

 その上、空と違って実戦的な異能を持っている。


 そんな胡桃がレベルの概念を手に入れれば、確実に空より強くなるに違いない。

 というか、空とは比較にならないレベルで、胡桃の方が強くなるに違いない。


(ちょっと悔しいって気持ちはあるけど、純粋に楽しみだな)


 どれだけ強くなるのか。

 胡桃は将来、どんな最強のヒーローになってくれるのか。


 空はわくわくしながら、二人の後を追うのだった。

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