第百十五話 空は胡桃とごはんを食べてみる②

「くーう♪」


 と、ニコニコ顔の胡桃。

 彼女は鞄をごそごそした後、小さな弁当箱を取り出しながら、空へと言ってくる。


「これ、作ってきたから食べなさいよね!」


「これって――」


「弁当箱に入ってるけど、中身はお菓子なんだからね!」


 と、胡桃は弁当箱の蓋をあける。

 すると、そこに入っていたのはクッキーである。

 なるほど、確かにおいしそうだ。


 けれど、空には一つだけ気になる事があった。


「胡桃これ、自分で作ってくれたの?」


「……そ、そうよ」


 と、目を逸らす胡桃。

 空としてはこんなこと思いたくない――だがしかし、露骨に怪しい。

 故に空は胡桃へ言葉を続ける。


「僕がこの前買って、冷蔵庫に入れておいたシャーリィ用のクッキーにそっくりなんだけど……僕の勘違い?」


「…………」


「えっと……ひょっとしてこれ、胡桃」


「あーもう! うっさいわね!」


 と、胡桃はクッキーを一枚手に取る。

 すると彼女は、それをそのまま空の口へと突っ込んできながら言ってくる。


「弁当箱に市販のもの詰めただけでも、あたしが作ったことになるでしょ! 違う? なんか違うなら言ってみなさいよ!」


「もごご――」


「ふんっ! いいざまね! あんたはそうやって、黙ってあたしが作ったクッキーを、涙流してありがたそうに食べてるのが、すっごくお似合いなんだから!」


 空はクッキーをもぐもぐ、胡桃を見ながら思うのだった。


(まぁいいんだけど……自分で作ったっていうなら、せめてクッキー自分で買おうよ)

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