第百一話 胡桃は圧倒的な力を目撃してみる
胡桃が引き返し、最初に見たもの。
それは時雨によって蹂躙される怪人の姿だった。
降り注ぐ光の剣。
あらゆる方向から怪人を狙い撃つ大小様々な光線。
「あれが光を操る最強の異能……『プロヴィデンス』」
まさに圧倒的だ。
本来、ヒーローは二人一組で怪人と戦う事が多い――理由はそうしなければ安定して勝てないからだ。
にもかかわらず、あそこに居る時雨は一人で怪人を圧倒している。
かつての最強、蒼天ヒーロー『スカイ』に代わり最強となったヒーロー。
白銀ヒーロー『エンジェル』は決して最強の名に負けてなどいない。
むしろ、その全てを持って最強を体現している。
そして、そんな最強の存在は。
「これで終わりにしますか……そろそろモフモフ分が不足してきました」
言って、持っている光の剣を空へと掲げる。
その後、それを怪人へと向けた瞬間だった。
空から巨大な光の柱が降り注いだのは。
「giiiiiiiiiiiiiiiiii!」
と、悲鳴をあげるのは怪人である。
やがて光の柱が収まると、そこに怪人の姿はなかった。
圧倒的な力を前に、塵も残さず消え失せたに違いな—。
「はぁ……面倒ですね。というかこれ、私では倒せない気がします」
と、怪人が消滅した場所を眺めて言う時雨。
胡桃はそんな彼女に近づいて行きながら、声をかける。
「時雨、やっぱりすごいのね! さすが最強のヒーローなん――」
「っ……! 何をやっているんですか、あなたは!」
と、時雨はそう言って胡桃を突き飛ばしてくる。
その直後。
胡桃が突き飛ばされる前まで居た場所――今では身代わりに時雨が居る場所。
その地面から無数の触手が現れたのだ。
さらに、その触手は次々に時雨に巻き付いていく。
けれど、事態はそれだけでは終わらなかった。
「これは……寄生型!? っ……梓さん! 早く逃げて、私の意識があるうちに!」
言ってくる時雨。
怪人は身体を靄状に変化させ、そんな彼女の身体を覆っていってしまう。
…………。
………………。
……………………。
胡桃が尻もちついたまま、呆然とその光景を見てどれくらい経った頃か。
胡桃の目の前には、漆黒の騎士甲冑に包まれた時雨が立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます