第七十七話 空と久しぶりの日常
現在、空は日本の学校――寮の自室へと戻ってきていた。
あのダンジョンでの生死をかけた日々は、二つの大きな変化をもたらした。
一つ目はレベル3へと上がったことだ。
アルハザード曰く、ボスを倒す前からレベルが上がっていたのではないか。とのこと。
というのも、スケルトンキングはレベル2ならば瞬殺されている相手らしいのだ。
なんにせよ、レベルが上がったのは本当に嬉しい。
ある意味ではダンジョンで遭難したのも、無駄ではなくなったのだから――とはいえ、もう一度遭難するのは、さすがにごめんではあるが。
さて、もう一つの変化。
今の空にとっては、こちらが問題なのである。
「…………」
時は空が日本に戻ってから二日後。
戻った直後、疲労から来る熱でぶっ倒れた空は、今もベッドで眠っていた。
そしてその看病をしているのは。
「うん、もうすっかり平熱ね。昨日の時点で熱は下がってたし、今日からいつも通り行動していいわよ」
胡桃である。
彼女は体温計を投げ捨てると「それにしても」と言ってくる。
「ダンジョンでレベル上げてたら、地面が崩れて戻れなくなって遭難って……」
「な、なんですか」
「あんたって運がないなって思ったの。でも、このあたしに看病されてるんだから、最悪ってわけじゃないわね!」
「……ノーコメントでお願いします」
「ちょっと! それどういう意味よ! あと敬語やめなさいよね!」
と、胡桃は空の首根っこを掴んでガクガクさせてくる。
空はそんな彼女へと言う。
「ちょ――なんでいつも胡桃は、僕のことガクガク揺すってくるの!?」
「なんか掴みやすいから! なんか文句あるの!?」
と、言ってくる胡桃。
空はそんな彼女を見ながら考える。
(凶暴極まりない胡桃だけど、看病してくれたのだけは感謝しないとな)
胡桃はこの二日間、本当に優しく看病してくれた。
特意技のガクガクをしてきたのも、この二日間では今が初めてだ。
それまでの彼女は――。
『奴隷だったら、ご主人様を大切にするのは当然なんだからね!』
と、ひたすら看病してくれた。
おでこに当てる濡れタオルを変えてくれたり、汗を拭いてくれたり。
正直、申し訳ないほどに看病してくれた。
胡桃はひょっとしたら、優しいのかもしれない。
と、空は彼女に対する評価を変え始めていた。
のだが。
「でさ、胡桃っていつまで僕の部屋にいるの?」
空はいよいよもう一つの変化について話す。
空が現状困っている、真の変化――それは。
「はぁ? あんたまだそれ言ってるの? 奴隷なんだから、ご主人様と一緒の部屋で暮らすのは当たり前なんだからね!」
と、言ってくる胡桃。
変化とは、彼女が空の部屋で同居を始めたことである。
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