第七十五話 空はダンジョンを踏破してみる
「ク~~~~~~~~~~~~っ!」
と、聞こえてくるシャーリィの声。
空がそちらを見ると、彼女は足を引きずりながらも懸命に駆けてきて。
ハグ。
と、空へと抱き着いて来る。
そして、シャーリィはそのまま彼へと言ってくる。
「クー! 怪我はないか!? 生きてるか!? シャーリィがわかるか!?」
「えっと……怪我はしてましたけど、もう大丈夫、です」
「クー! 言ってることが滅茶苦茶だ! 敬語に戻ってるし、クーがおかしくなった!」
「あ、いや――ちょ」
「クー! しっかりしろ! シャーリィはクーが居なくなったら生きて行けない!」
と、ようやく本来の元気を取り戻した様子のシャーリィ。
空はそんな彼女を見て一安心、しばらく彼女の好きにさせてやる。
それと同時、空は思うのだった。
(生き残れたんだ……いろいろあったけど、僕達は生き残ることができた)
だが、それは決して空だけのおかげではない。
と、空は視線をアルハザードへと向ける。
すると彼女は顔を片手で隠す妙なポーズを取りながら、空へと言ってくる。
「クウ、それが貴様の名前か……くく、覚えておいてやろう」
「今回は助けてくれて、本当にありがとうございます。もしも、あの時アルハザードさんが来てくれなかったら――」
と、空は言いかけてふと思う。
「アルハザードさんはどうしてここに? ひょっとして、ギルドで捜索依頼とかが出されていたんですか?」
それにしてもおかしい。
たかがと言ってはアレだが――たかが駆け出し冒険者の捜索依頼に、英雄と呼ばれる人物が出張ると思えない。
空がそんな事を考えていると、アルハザードは言ってくる。
「手が届かないところは仕方ないが……手の届く範囲ならば、どんな小さな者でも助けに行く。それが英雄の務めというものだろう?」
「じゃあ、僕達を助けるためだけに……本当に?」
「驚く必要があるのか? 英雄として当然の行い……俺はそう思うが」
理想だ。
アルハザードは空が思い描く理想。
空は将来、こんなヒーローになりたいのだ。
「あぁ、それと捜索依頼のことだが。しっかりと出ていたよ、ギルドから好かれているようだな……いいことだ」
と、アルハザードは空へと更に続けて言ってくる。
「ついでにもう一つ、受け取れクウ」
アルハザードから投げ渡されたのは、ボスからドロップした技能書だ。
空がそれを開いてみると、そこに書かれていたのは――。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます