第六十六話 空とダンジョンスパイダーの復讐

「なるほどね」


 シャーリィの話をまとめるとこうなる。


 シャーリィは本当にもうしわけないことに、折れた足で頑張ってクーを背負い移動。

 移動先はワンフロア下であるこの通路。


 シャーリィはこの通路からは魔物気配がしないのを確認。

 見張りをしつつ、空を休息させてくれたとのことだ。


 なお、休息時間はシャーリィの体感によると二日間とのこと。

 なんというか本当に――。


「ごめん……見張りしてくれてたんじゃ、ろくに休めてないよね?」


「そんなことない! 獣人族は感覚が鋭いからな! 少しくらい寝てても、敵が近づけばわかるんだ! だから、シャーリィも少しだけ寝れた!」


 と、尻尾をふりふりシャーリィ。

 彼女は「あ、そうだ!」と、彼女の隣にあるナニカをごそごそし始める。


 見た限り、それはバックだ――ただし、毛が生えている。

 しかも、ダンジョンスパイダーみたいな色をしている気がする。


 ごそごそ。

 ごそごそごそ。


 シャーリィはその毛バックから更にナニカを取り出す。

 そして、彼女はそれを空へ差し出しながら、言ってくる。


「クー! これ、ごはんだ! クーがお腹空いてると思って、寝ている間に作ったんだ!」


「え、えっと。これは――」


「大丈夫だ! シャーリィもちゃんと食べてるから、シャーリィの分は気にしなくていい! しっかり食べて、栄養補充だ!」


「……そ、そうではなくて」


 コノニクハナンノニクデスカ。


 この通路エリアの一角に、燃えカスなどがある。

 その事から、とりあえず焼かれている肉だというのはわかる。


 さらにシャーリィが勧めてくれていることから、安全だということもわかる。

 しかし、空は肉をダンジョンに持ち込んだ記憶がない。


「…………」


 空は笑顔を引き攣らせながら、その肉を見ていると。


「ひょっとしてクー……蜘蛛肉を食べたことがないのか?」


 と、言ってくるシャーリィ。

 彼女は蜘蛛肉を少し裂き、自らの口に運びながら言ってくる。


「もむもむ……香ばしくて美味しいぞ! シャーリィのおすすめだ!」


「…………」


(よく考えろ、空。シャーリィは頑張ってこれを作ってくれたんだ。それに蜘蛛肉とはいえ、いまはもう焼かれた肉だ!)


 よし。

 と、空は覚悟を決め蜘蛛肉へと手を伸ばすのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る