第六十五話 空と魔眼の代償②
「……ん」
空はゆっくりと目を開く。
最初に見えてきたのは、ダンジョンの天井。
(寝て覚めたら全部夢で、部屋で寝てました……みたいな、都合良い事態にはならないか)
空はそのままボーっと、天井を見つめていた。
けれど。
「っ!」
空は自分の状況に気が付き、飛び起きる。
寝ている場合ではない。なんせ、空はあの時意識を失ってしまったのだから。
(あれからどれくらい経ってる!? いや、そんなことはどうでもいい! シャーリィは、シャーリィはどこに――)
「クー……? クー! 起きたのか!」
と、聞こえてくるシャーリィの声。
見れば彼女は、空のすぐそばに――まるで彼を見守るように座ってくれていた。
空はそんな彼女へと言う。
「シャーリィ、ここは? あれから僕は……僕達はどうなったの?」
「あのままあそこに居るのは危ないと思ったから、シャーリィがクーを運んだんだ!」
「運んだって……」
シャーリィの足は折れているのだ。
そんな状態で気絶した男性を運ぶのが、どんなに辛いことか。
「ごめん……シャーリィ」
「大丈夫だ! クーが心配してるようなことは何にもなかったぞ!」
と、言ってくるシャーリィ。
彼女は尻尾をふりふり続けてくる。
「確かに少し大変だったけど、シャーリィはクーのためなら頑張れるんだ!」
「でも――」
「それに今はもう足も治ってきた! 獣人族は治るのが早いんだ!」
と、シャーリィは折れていた足をゆっくりと動かす。
その後、彼女は満足したのか、再び笑顔で空へと言ってくる。
「まだ少し痛いけど、もう動かせる程度には治ったんだ!」
「それはよかったんだけど、あんまり無理しないでね? まぁとにかく……本当にありがとう、それにごめん。迷惑かけちゃって」
「全然迷惑じゃない! シャーリィはクーのためなら、なんでもできるんだ!」
と、シャーリィは先ほどと同じようなことを言ってくる。
空はそんな彼女の頭を撫でながら考える。
(とりあえず、シャーリィが無事でよかった。だけどここはどこで、あれからどれくらいの時間が経ったんだろう?)
周囲はまるで通路のような暗い一本道。
左には登り階段、そして右には――。
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