第六十一話 空とレア技能

●魔眼『王の左目』

  発動時、使用者はあらゆる時間の流れを緩やかにみることができる。また、この時の流れの中で、使用者は本来の速度で行動することができる。

  使用可能時間は使用者の精神力に由来する。


 要するにこの技能。

 自分の体内時間を極限まで高め、相手をスローモーションにする技能だ。

 と、空が改めて技能の確認をしていると。


「どうだ、クー?」


 言ってくるやはり元気のないシャーリィ。

 空はそんな彼女へと言う。


「うん、問題なく発動できる……少しでも使うとかなり疲れるから、ここぞって時にしか使えないけど」


「でも、それが使えてよかったぞ。もしこのダンジョンの技能制限にひっかかったら、完全に取り損だ」


「まぁ、そしたらそしたで、ダンジョンから無事に脱出してから使ってたよ。全部シャーリィのおかげだよ、ありがとう」


「シャーリィは当然のことをしただけだ……ただの足手まといにはなりたくないんだ」


 空はそんなシャーリィを優しく撫でながら考える。


(でも、この魔眼技能が使えたってことは、このダンジョンの技能制限はもうほぼ完全に把握できたかな)


 要するにこのダンジョン。

 完全に使用者から切り離されて発動する技能にのみ、制限を課すに違いない。

 つまり、仮に先の魔眼技能の効果が――。


 目視した相手の動きを遅くする。


 といった感じのものならば、制限対象になっていたに違いない。

 だから当然、火の玉を飛ばす魔法 『ファイア』も使えないのである。


「でも、本当によかったぞ……魔眼系の技能はただでさえレアなのに、クーが今手に入れたような効果のは、聞いたこともない」


 と、言ってくるシャーリィ。

 空はそんな彼女へと言う。


「そうなの? あんまり詳しくないから、わからないんだけど」


「そうだ、とっても珍しい……強力なレア技能っていうやつだ」


「燃費は悪そうだけどね」


「燃費が悪い分、きっとかなり強力だ……使えば、わかる」


 と、シャーリィは再び疲れた様子を見せる。

 空はそんな彼女へと言うのだった。


「シャーリィ、せっかくだからここで少し休もう。見張りは僕がしておくから」

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