第五十九話 空と初めての冒険

「クー、前から二体くる……」


 と、空に背負われながら言ってくるシャーリィ。

 彼女は更に続けて言ってくる。


「蜘蛛の臭いと気配がするから多分……ケイブスパイダーの上位種――ダンジョンスパイダーだ」


「強さは?」


「スケルトンエリートより強い……二体相手じゃ絶対に無理だ」


「じゃあ、やり過ごしてから進もう」


 空がそういうと、シャーリィはこくりと頷いてくれる。


 さて、時は三階層踏破を決めてから数時間後。

 現在、空達は先の様に魔物との戦闘を避け、先へと進んでいた。


(運がいいことに、ここまで魔物と戦闘した回数はゼロだ)


 それもこれも、シャーリィの索敵能力が優れていたおかげだ。

 こうなってくると、結果的にシャーリィが居てくれた方が安全だったに違いない。


 空がそんなことを考えながら、ダンジョンの来た道を戻ると。


「後ろからも気配を感じる。このままじゃ挟み撃ちの形になる……」


 と、シャーリィはやや震えた声で言ってくる。

 彼女はいつもの元気さを感じさせない様子で、さらに続けてくる。


「クー……どうしよう、どうすれば」


「急いで来た道を戻ろう。そこに小部屋があったよね? うまく行けば、後ろから来てる奴と鉢合わせる前に小部屋に隠れられる!」


「で、でも……未踏破ダンジョンの小部屋は危険なんだ」


 これはシャーリィから事前に聞かされた事だ。

 なんでも、未踏破ダンジョンの小部屋には罠――毒が噴き出すものや、魔物が召喚されるなどのことが多くある様なのだ。


「もうそれしか手段がない。それに挟み撃ちされるより、小部屋に逃げ込んだ方がまだ生きていられる可能性がある!」


「っ……わかった。シャーリィはクーを信じる!」


 と、言ってくるシャーリィ。

 空はそんな彼女の言葉を聞くと同時、なるべく気配を殺しつつ、走り出すのだった。

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