第五十八話 空は脱出法について考えてみる②
「ダンジョンを踏破するんだ……そうすれば、きっとこのダンジョンから脱出できる」
と、シャーリィは言ってくる。
空はそんな彼女へと言う。
「ダンジョンを潜って下に行っても、脱出はできないんじゃ……なのにどうして?」
「ボス部屋だ……ダンジョンにはボス部屋っていうのがあるんだ」
シャーリィ曰く。
ボス部屋とはダンジョンに必ず一つあるもの。
そして、ボス部屋の奥にはダンジョン入り口に通じる転送陣があるという。
しかし、空はそれを聞いて一つ疑問に思う。
彼はそれをシャーリィへと問う。
「ちょっと待って。でも、このダンジョンのボスは二階層に居たんだよね? ずっと前に倒されて、すでに二階層で転送陣も発見されてるんじゃ……」
「そうだ……でも、きっとそれはフロアマスターだ。ダンジョンはボスとフロアマスターの二種類がいるんだ」
と、再びシャーリィの説明。
ボスとは文字通り、ダンジョンの最奥に居る魔物。
フロアマスターとは特定階層おきに存在する魔物とのこと――そして、フロアマスターの部屋にも転送陣があるとのことだ。
「つまり、登れないなら降りればいいっていうのは……」
「そうだ……ボスかフロアマスターを倒して、転送陣から入り口に戻るんだ」
と、シャーリィは言ってくる。
けれど、彼女の言葉はそれで終わらなかった。
「だからクー……シャーリィは置いていけ、シャーリィは足手まといだ」
「シャーリィ、その話はさっき――」
「このダンジョンの敵は強い! シャーリィが居たら勝てない! さっきだって、クー一人なら逃げる選択肢だってあった!」
「…………」
「だから、これからクーはここぞって時以外逃げるんだ! 力を温存して、温存して……最後に全力で戦うんだ! そうすれば、クーだけはこのダンジョンから――っ!?」
と、シャーリィは言葉を止める。
その理由は簡単だ。
「僕は絶対にシャーリィを置いて行かない。もし、ここでシャーリィを置いて行ったら、僕はもうヒーローにはなれない……なる資格がない」
「お、おろせ! シャーリィを背負ったままじゃ戦えない! クーが死んじゃうぞ!」
と、シャーリィは空の背中でジタバタ暴れている。
空は立てかけてあったスケルトンエリートの両手剣を手に、彼女へと言うのだった。
「戦う時はちゃんと安全なところにおろすから、心配しなくて大丈夫」
「そういう問題じゃない! クーはバカだ! バカだったんだ!」
空はそんなシャーリィを無視。
そのまま彼女をおぶって先に進むのだった。
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