第五十六話 空と第三階層――未踏破領域②
ガシャ。
ガシャン。
と、ゆっくり音をたてて歩いて来るスケルトン。
第一階層に居たスケルトンは小ぶりの剣を持っていた。
けれど、今目の前にいるのは違う。
「スケルトンエリート……そんな、なんで」
と、震えた声のシャーリィ。
彼女は慌てた様子で言ってくる。
「クー! 逃げろ! スケルトンエリートには今のクーじゃ勝てない! あれはレベル3でも苦戦する魔物なんだ!」
「逃げろって、シャーリィを置いていけるわけない!」
「シャーリィのことはいい! このままじゃ危ないんだ! シャーリィのせいでクーが危ないのは嫌だ! だから――」
「シャーリィ。少し黙ってて」
空は未だ何か言っているシャーリィを無視。
そのまま魔物――近づいて来るスケルトンエリートへ向き直る。
スケルトンエリート。
骨の色はスケルトンと異なり、やや黒ずんでいる。
一番の違いは武器が巨大な両手剣にないっている点だ。
(スケルトンに筋力はなさそうだけど、あの両手剣を振れるのか? 振れるにしても、そんなに速度は出ないはず)
ならば、取るべき作戦は一つだけ。
まず全力で両手剣の一撃を躱すか、捌くかする。
その後、隙だらけに違いないスケルトンエリートの胴体に拳技『破砕』を入れる。
シミュレートは完璧だ。
あとは実行に――。
「っ!?」
その時、突如スケルトンエリートの姿が消えた。
いったいどこに――。
「クー! 上だ!」
聞こえてくるシャーリィの声。
空は咄嗟に剣を頭上に構えガードするが。
「ぐっ……ぶふぅ――!?」
襲い来る凄まじい衝撃。
鼻から噴き出る鼻血。
メキメキと音をたて、折れそうになる剣。
見れば、スケルトンエリートが「カタカタ」と笑いながら、剣を振り下ろしていた。
攻撃は当然まるで見えなかった――ガードできたのはシャーリィのおかげ、完全に偶然だ。
やばい。
やばいやばいやばい。
勝てない。
今の空では絶対に勝てない。
けれど、負けるわけにはいかない。
ここで空が負ければ、次はシャーリィの番なのだから。
それだけは絶対に駄目だ。
「っ……ぁああああああああああああああああああああっ!」
空は全力で剣に力を入れ、スケルトンエリートの両手剣を押し返そうとする。
だが、やはりスケルトンエリートの力は強く、まるで押し返せない。
それどころか、空の剣のヒビはどんどん広がっている。
(クソ、クソ、クソ! どうすれば――!)
と、再び空の剣がスケルトンエリートに押し込まれ始める。
その時。
ガッ。
と、鈍い音と共にスケルトンエリートの態勢がやや崩れる。
シャーリィがスケルトンエリートの頭部に石を放ったのである。
(スケルトンエリートの注意がシャーリィにいってる? それに体勢も……今しかない! 今こいつを倒せないなら、僕達はもう!)
空は渾身の力を込め、スケルトンエリートの両手剣を弾く。
同時、空の剣は粉々に砕け散るがもう構わない。
「こんなところで……死ねるか!」
言って、空はすぐさまスケルトンエリートに密着。
拳技『破砕』を乗せたひじ打ちを胴体へと繰り出す。
(これでもし、スケルトンエリートがスケルトンと違って、拳技に弱くなかったら……)
空は殺される。そして当然、シャーリィも。
さぁはたして結果は。
「…………」
と、空は無言でその場に尻もちをつく。
そんな彼の目の前に、スケルトンエリートの姿はもうなく。
崩れた骨だけが積まれているのだった。
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