第二十九話 空と運命の日②

「狐耳と狐尻尾をつけた女性に、朝から奴隷プレイですか……しかも、全裸で居ることを強要させる……高度ですね。高度な変態プレイすぎて、引きます……ドン引きです」


 と、絶賛正座している空に向け、言ってくるのは時雨である。

 彼女は更に続けて言ってくる。


「しかも兄さん。わたしが起きた時、シャーリィさんに何をしようとしていたんですか? 眠っている彼女に覆いかぶさろうとしているように見えましたよ」


「ち、ちが――」


「妹が寝ている横で、朝からイタすつもりだったんですか……そうですか、最低ですね」


「あーもう! だから違うって! 少しは話を聞いてくれよ!」


 と、空はなおも冷たい視線を向けてくる時雨へと言う。


「覆いかぶさろうとしてたのは、襲おうとしてたんじゃないって! 気が付いたら裸で眠っていたシャーリィに、寒いだろうと思って布団を追加でかけようと――」


「それにしてはわたわたした動きでしたが?」


「そ、それは……ほら、時雨に見られると勘違いされると思ったから……急いでて、その」


「ジトー……」


(うぐっ……またこの目。時雨のこの目、心の中を見透かされそうで焦るんだよな。で、でも今の僕は、本当のことしか――)


 と、空がそこまで考えた時だった。


「クー! クー! 大変だ! お風呂がボコボコだ! 魔物が居るぞ!」


 聞こえてくるシャーリィの声。

 同時、空と時雨の方へ駆けてくるのは、シャーリィである。

 しかし。


 シャーリィはまたも裸だった。

 さきほどとりあえず風呂に入れたのが、まさかのそのまま出て――。


「ちょっ! 何を見ているんですか、兄さん! 目を瞑ってください! 向こうを向いてください! 訴えますよ!」


 と、空はそんな時雨の声に従い咄嗟に目を瞑る。

 すると、時雨はシャーリィへと言う。


「なんで裸なんですか! あー……体も拭かないで!」


「お風呂に魔物が出たんだ! ボコボコだ!」


「地球に魔物はいませんよ……もう、ちょっと動かないでください」


 と、時雨の言葉の後、なにやら部屋をごそごそする音。

 それから数十秒すると、再び時雨がシャーリィへと続ける。


「体を拭きますから、ぶるぶるしないでくださいよ」


「ぶるぶるってなんだ?」


「よく濡れた犬がやるやつですよ」


「シャーリィは犬じゃない! 狐――あっ、んぅ。 く、くすぐったい! シグレ、くすぐったいからやめろ!」


「はいはい」


 それから数分。

 空はシャーリィの喘ぎ声らしきものに、頭を痛めることになるのだった。


 なお、これは余談だが。

 シャーリィが魔物と言っていたのは、お風呂のジャグジー機能のことだった。

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