第二十八話 空と運命の日

 もふ。

 もふもふ。


 翌朝、空が最初に感じたのは、そんなもっふりだった。


 もふもふ。

 もふもふもふ。


 空の顔にあたる艶があり、なめらかでありながらも猛烈なもっふり感。

 高級毛布など話にならないほど、圧倒的な肌触りのよさ。


「ん……」


 このもふもふの正体はなんなのか。

 それを是非とも確かめたい。


 空は寝ぼけた頭を全力で回転。

 魔性のもふもふのせいで二度寝したいのを我慢し、全力で瞳を開ける。

 すると。


「むにゃ……くー、いいにおい……」


 目の前にはそんなことを言うシャーリィが居た。

 シャーリィは自らの尻尾を体の前で抱き、気持ちよさそうに寝ている。

 なんとも平和な光景である。


 だがしかし。

 問題が一つあった。


「ちょっ!?」


 空は一気に意識が覚醒する。

 なぜならば、シャーリィは裸だったからだ。

 美しくもやや汗ばんだ体を時折くねくね、彼女は自らの狐尻尾を抱っこしているのだ。


(っていうか、なんでシャーリィが僕と同じ布団で寝てるの!?)


 昨晩。

 シャーリィが泊まるので、時雨も泊まるという流れになった。

 故に空は布団を敷き、女性二人に普段使いのベッドを譲ったのだ。


 それが朝起きればこのざまである。

 しかし、空はここで最悪なことに気が付いてしまう。


(そ、そうだ……この部屋には時雨も居るんだ。時雨が起きるまでに、この状況をなんとかしないと)


 そうしなければ、時雨からまた「朝から奴隷プレイですか……最低です」とか言われる。

 そんな未来は容易に想像できる。


 こうして、空の運命のミッションは開始されたのだった。

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