第二十五話 狐娘は親友を作ってみる

「シグレ! このゲームはつまらない! さっきからシグレが勝ってばかりだ!」


「シャーリィさんが弱いんですよ……あなたが弱すぎるせいで、つまらないのはこちらです」


 と、言ってくるのは謎の少女こと日向時雨(ひなたしぐれ)である。

 彼女は「飽きました」と一言、コントローラーを放りながら言ってくる。


「話を戻して申し訳ないんですが。事情はともかく……この部屋の外へは絶対にでないでくださいね」


「なんでだ?」


「さっきのわたしのように、シャーリィさんを怪人と勘違い……結果、倒そうとする人が確実にいるからです」


「? でもシグレは攻撃してこなかったぞ!」


と、シャーリィのそんな言葉に対し。

 時雨はジトッと気怠い瞳で言ってくる。


「それは色々考える余地があったからです」


「考える余地?」


「はい。例えばあなたが鍵のかかった兄さんの部屋に居たこと。兄さんを『クー』と親し気に呼んでいたこと……他にも怪人らしくない凶暴性の欠落などなど」


「んー……」


 シャーリィには時雨の言っていることがよくわからなかった。

 わかったことといえば、とにかくこの部屋から出るなということだけだ。


(きっとシャーリィがそうしないと、クーもシグレも困るんだ!)


 と、シャーリィがそんなことを考えていると。


「わかりましたか?」


 と、言ってくるのは時雨である。

 シャーリィはそんな彼女に対し。


「わかったぞ!」


 と、言いながら時雨へと抱き着く。

 シャーリィはそのまま大きな狐尻尾で、時雨をもふもふしてあげながら彼女へと続ける。


「シャーリィはクーが大好きだ! だから、クーの妹のシグレも大好きだ! シグレの言うことも、ある程度なら聞く!」


「わ、ちょっ……は、はなしてください!」


「遠慮するな! シャーリィの尻尾は気持ちがいいって、シャーリィの妹から定評があるんだ!」


「い、いや……そういうことではなくてですね!」


「もふもふ、だ!」


「うっ……あ、やめ……っ」


 と、次第に力が抜け始めた様子の時雨。

 シャーリィは彼女をゆっくり床へ押し倒し、本格的モフモフを開始する。


「シャーリィの尻尾は気持ちいいか?」


「き、きもちい、です……だから、もう、やめ……これ以上はおか、しく」


 と、狐尻尾に体を撫でられる度、ビクンビクンしているのは時雨である。

 シャーリィはそんな彼女を見て思うのだった。


(尻尾で撫でるだけで、こんなに気持ちよさそうにする奴初めてだ! なんだか、シャーリィも楽しくなってきたぞ!)


 これは余談だが。

 時雨はこの日以来、定期的にシャーリィの尻尾をもふもふしなければ、生きていけない体になったのだった。

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