第二十六話 空と妹

「ごめん……先に説明しておけばよかったね」


 時は空が校長と話してから数分後。

 場所は空の部屋である。


「完全に僕のせいだ。時雨が来るかもしれないってことを、失念してた」


「いえ、結果として何も問題は起こらなかったんですから、そこまで気にしなくてもいいかと」


 と、言ってくるのはこの学園の制服を着た少女――日向時雨ひなたしぐれである。

 彼女は「それよりも」と、ジトっとした瞳で続けてくる。


「シャーリィさんから聞きましたけど、兄さんの能力で異世界から来たってどういうことですか?」


「え、あ……それは……」


「兄さんの異能『道具箱』の能力は、空間にゲートを作り出して、そこから物を出し入れできるだけの能力ですよね?」


「え~っと」


「ジト~……」


 と、時雨は空から視線を外さずひたすら見つめてくる。

 気怠そうな瞳なのに、凄まじい眼力である。


(まぁ、時雨は妹だし……話しても全く問題ないよな。校長あたりに知られると、金のなる木として利用されるのが、目に見えるけど……)


 空はそんなことを考えた後、時雨へと言うのだった。


「少し長くなるけど、全部話すよ」


「少し長くなっても、全部聞きましょう……わたしの大事な兄さんの話ですから」

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