第十六話 空は日本に戻ってみる

「むぅ~」


 と、先ほどから口をとがらせているのはシャーリィである。

 彼女はそんな表情のまま、続けて言ってくる。


「クー……本当に帰るのか?」


「うん、もう夕方だしね。というか、わざわざこんな街外れまで、一緒に来なくてもよかったのに」


「いい。シャーリィの家もこっちだ……それに、シャーリィはクーと少しでも長く居たい!」


「また近いうちに来るよ」


「むぅ~……」


 と、今度は狐耳と狐尻尾をペタリと倒してしまうシャーリィ。

 彼女は空と別れる時、毎度こうなる。


(見ていて申し訳なるけど、なんだか嬉しくもあるんだよな)


 空はここまでストレートに好意をぶつけられたことがなかった。

 故に、シャーリィの行為はとても新鮮で、温もりを感じられるのだ。


(明日にでもまた来ようかな。シャーリィに会いたいだけじゃなくて、レベルを上げるという本来の目的もあるし)


 と、空は決心したのち、シャーリィへと声をかける。


「じゃあ、僕はそろそろ帰るから」


「なぁ、クー……この近くに泊まるのはダメなのか?」


「お金があんまりないから、宿泊費はなるべく――」


「だったら、シャーリィの家に泊まればいい! シャーリィの家族は歓迎だ! 狐娘族は人間が嫌いだけど、クーならきっと大丈夫だ! シャーリィがいつも話してるからな!」


「いや、急にいったら絶対に迷惑だよ」


「そんなことない!」


 ぷんすかと、狐尻尾を立てるシャーリィ。

 空はそんな彼女の頭を撫でながら言うのだった。


「じゃあ、今度シャーリィの家で泊まらせてもらうよ。でも今日のところは、いつも通り帰る……それでいいかな?」


 それに対するシャーリィの返事は、猛烈な狐尻尾ぶんぶんと、猛烈な狐耳ぴこぴこであった。

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