第十七話 空は日本に戻ってみる②

 場所は街外れの洞窟。

 時はシャーリィと別れてから数分後。


「よし、大丈夫そうだな」


 空は周囲に誰もいないのを確認したのち。


「異能『道具箱』!」


 目の前へ手を翳し、自らに宿る異能を発動させる。

 すると現れたのは空間の歪み――宙に浮かぶゲートのようなものである。


 ゲートの向こう側は歪みのせいで、なにも見えない。

 しかし、これまでの経験上この先は日本――ヒーロー養成学校寮の自室に違いない。


「さて、帰るとするか」


 空は目を閉じ、自ら作り出したゲートへと一歩を踏み出す。

 そして次の瞬間、空が再び目を開けると――。


「ただいま」


 そこにあったのは予想通りの光景。

 東京ヒーロー養成学校寮にある空の自室である。


「んっ……はぁ~……今日も疲れた」


 異世界でのレベル上げに、強盗の撃退。

 なかなかに充実した一日だ。


「っと、ゲートを閉じないと。もっとも、僕と僕の持ち物以外は通れないから、向こう側から何かが来るなんてことは――」


 と、空の言葉はそこで止まる。

 なぜならば。


「クー! ここはなんだ!? シャーリィはこんなの見たことないぞ!」


 聞こえてくる声。

 空が振り向いた先に居たのは。


 空と空の持ち物しか通れないゲート。

それを超え、日本は東京――ヒーロー養成学校寮の空の部屋に立つ。


「ここがクーの家なのか?」


 狐娘の姿だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る