第8話評論8
「先生!こんなところにいらっしゃったんですか!本番ですよ!早く!」
「ん?なんだ。わしか?」
「先生は先生しかいないでしょう!さあ早く!マイクつけて!あと『これ』持ってください!」
「ん?なんだ?この大きな『しゃもじ』は…?」
「はい!カメラ回りまーす!本番!はい!」
「ん?何を言っておる。このこわっぱが。わしは海原(うなばら)雄山であるぞ」
「はいカット!ちょっと先生ぇ!その『しゃもじ』を持ってそこの家の晩御飯の『食レポ』をするだけですよー。頼みますよ!」
「なに?『食レポ』だと?」
「それじゃあテイク2!はい!」
「ふん。わしだ」
「はい、どちらさんで。あ!その『しゃもじ』は…!?え?うちですか!?」
「何を言っておる。このこわっぱが」
「ちょうど今、出来たばかりなんですよー。えー、恥ずかしいなあー。これ全国に放送されるんですよね(いやヤラセだけどね)」
「ふん。あまり調子に乗るでない。庶民ごときが。この馬鹿たれが」
「(あれ?この番組ってこんなに辛口やったっけ…)あ、カメラさんこちらです」
~食卓へ~
「ふむ。これをわしの口に入れろと。話にならん。まずその米。洗米の際に何分水に浸した?」
新婚夫婦の綺麗な奥さん「(え…?)いや…、電子炊飯器なんで。普通に炊きましたが」
「話にならん。米が泣くどころか米を殺しておる。それにこの味噌汁。出汁は何からとった?」
新婚夫婦の綺麗な奥さん「(え?)あ、いえ…、市販の…出汁入りの味噌を…」
「それこそ手抜きである。本来なら『いりこ』や『利尻昆布』、『干し椎茸』などもいい出汁が取れる。沸騰させずに八十度前後をキープして四十分。それにその『出汁巻き』。断面を見れば分かる。『卵焼き』と変わらんではないか。このクソアマが」
新婚夫婦さん「…」
「『ほうれん草のお浸し』も国産ではないどころか冷凍ものであるな。そしてこの『焼き鮭』は酷すぎる。そもそも」
「カットォ!カットォ!ちょっとお!」
「やかましい!このこわっぱが!おい!中川。帰るぞ。あ、そうだ。最後に忠告しておこう。そのクソアマの口から別の男のイチモツの匂いがプンプンしておる。昼間咥え込んだのだろう」
新婚夫婦の旦那さん「お、お前!」
新婚夫婦の綺麗な奥さん「ち、違う!私知らないから!」
海原雄山(うなばらゆうざん)。その嗅覚は常人のそれを遥かに凌ぐかは分かりません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます