第16話 さいごのたたかい

戦闘機は固まって墜落し、戦車は凍りついて動かない。中にいる人間も恐らく氷漬けになっているだろう。俺はそれらを乗り越えて青太郎と向き合う。

「にいぃぃさんんん、、、」

「青太郎、、、」

炎の悪魔を取り込んだ影響か、全身の発熱にも耐えられるようになっていた。青太郎は暴走して、我を失っているようだった。

「済まない、こんなになってしまうまで俺のことを考えてくれていたんだろう?だが、俺はお前の期待には添えられない。ここで俺たちは終わりにしよう、、、!」

周囲の氷を溶かしていき、一歩一歩青太郎に近づく。

「青太郎、お前は昔から冷静なやつだった。戦争の時も最期まで落ち着いて俺を防空壕まで誘導してくれたっけ」

「ウウウゥゥゥ、、、」

「でも、俺たち家族のためなら偶には熱くなってくれたよな。俺は嬉しかったぞ」

「ウウゥゥ?」

俺はゆっくりと、だけど確かに青太郎へと歩み寄る。すまない、炎の悪魔。俺は自分の高熱で氷の悪魔もろとも消し去る、、、!

「ぐ、、、ああぁぁ、、、」

全身が焼けていくのを感じる。高音の熱波が辺りを包む。

「せい、、、たろ、、、」

「にい、、、さん、、、」

「これで、、、終わ、、、」

「させん!」

そこに現れたのは、なんと服役中のはずのジンライだった!

「な、、、!?ジンライ、どうしてここに、、、」

「それは私の口から言おう」

全身が黄色の大男が語る。

「私は雷の悪魔、お前たちが取り込んだ悪魔たちの長男だ。このライタとかいう男は私の名を無断で使い、お前と戦ってみせたそうだな」

「ああ、まさかお前、ジンライと、、、」

「そうだ、私はこの男、ジンライライタに力を託した。こいつはお前たちより潜在能力が高い。こんな熱は蚊に刺された程度にしか感じていないだろう」

「何を言うか、雷の悪魔。これはサウナにいるようなものであるぞ」

「ジンライ、お前、本当に雷の悪魔と契約したのか?」

「ああ、そうだ。最初に刑務所で彼を見たときは驚いたが、恩人のお前を助けるために協力は惜しまんよ」

「、、、俺たちをどうするつもりだ?」

「青太郎は元の世界に送る。お前はこの世界で生き続け、、、」

「俺はまたこの世界を旅をする生活に戻ろうと思う。俺の顔もここら辺では知られてしまったからな。そして、困っている人たちを助けていこうと思う」

「そうか、、、」

「ジンライ、雷の悪魔、ありがとう。お前たちのお陰で、俺たちは、、、」

「兄さん、ごめんね、、、」

「青太郎、、、!」

青太郎はかすかに意識が戻っていたようだった。

「兄さん、最期に伝えたいことがあるんだ。兄さんのことを勘違いしてごめん、、、兄さんは才華ちゃんのことを本当に想っていたんだね。それを僕は分かっていなかった。あの時から兄さんは変わらずに他人想いだった」

「青太郎、俺こそすまない。お前の苦悩を知らないまま、、、」

「いいんだ、兄さんに大事な人が出来たのは僕も嬉しいよ、、、それじゃあ僕はもう行かなきゃ、、、」

「、、、もういいか、煉太郎、、、」

「ああ、ジンライ。もう別れは済んだ」

「それじゃあ、行くぞ青太郎!」

「うん、、、!」

ジンライ、雷の悪魔、そして青太郎はその場から姿を消した。そこに残ったのは溶けた氷から出てきた軍人と、その場に立ち尽くす1人の青年だった。

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