第15話 さいごのことば

「佐藤チーフ!」

「須藤!これはどういうことだ!?」

「詳しい話は後だ!俺の弟が悪さをしている。市民の避難誘導を頼む!俺は大元の弟を止める!」

「、、、無茶はするなよ、、、」

「ああ、、、!」

俺は氷結の規模から青太郎の位置を割り出し、氷を溶かしながら彼の居場所へと向かった。

「兄さん、どうして、、、」

俺は青太郎と対峙していた。

「青太郎、、、ありがとうな」

「?」

「俺のために色々と助ける手段を考えてくれたんだろ?」

「まあ、そうだけど。でも、兄さんは反対なんでしょ?」

「そうだな、でもここに来るまで悩んだりもしたぞ。けどな、やっぱり俺は自分より才華を優先したいんだ」

「そう、なら、、、!」

青太郎の周囲を凍てつく波動が包む、、、!

「無理矢理にでも球体世界に連れて帰るよ!」

「ちっ、、、」

俺は広がる氷を溶かしていく。炎の悪魔の力をこんなに大規模に使いのは初めてかもしれない。それに全身が焼けるように熱い。近頃まで発熱が抑えられていたのは力を使っていなかったからなのだろう。

「はああぁぁ!」

「うおおぉぉ!」

青太郎の近くのビル群は凍りつき、反対に俺の近くの方は所々塗装が溶け落ちている。体感的に数百度はあるだろう。衣服は溶け、今にも全身が焼け落ちてしまいそうだ!

「兄さん、もう観念するんだ!」

氷の進む速度の方が若干早い。まずい、押されている、、、!だけど、俺は負けるわけには、、、

「すどーーー!一旦引けーーー!」

「チーフ!?」

俺は佐藤チーフの言葉を信じて、彼の言う通りその場を離れた。すると、、、

「撃てーー!」

ドーン!という轟音が辺りを包む。

「須藤、無事か!?ボロボロじゃないか」

「ああ、チーフ。市民の避難誘導ありがとう。だが、これは一体、、、」

チーフは羽織るためのマントをくれた。

「ネイル国家が緊急事態と見て国軍を招集してくれたんだ」

上空には戦闘機が、地上では戦車が闊歩していた。

「お前は彼らに気づかれないように、ここから去るんだ。見つかったらどんな実験に付き合わされるか、、、」

「いや、いい。構うもんか、俺は弟に引導を渡す義務がある」

「須藤、お前まさか死ぬつもりか、、、?」

「ダメ!ダメだよ、そんなの、、、」

「才華!?」

才華が突然駆け寄ってきた。

「私、煉太郎さんが大事なの!好きなの!世界で一番!例えアイドルを辞めなくちゃいけなくなっても、煉太郎さんについていきたいの!」

俺は才華の意思を尊重したくて事実を話す。

「、、、青太郎の、俺の弟の提案は、もう一つの世界、球体世界にお前と一緒に行って、俺の寿命を戻すものだ。だけど、それと同時にお前は不老になってしまうんだ。それでも俺についてくると言うのか?」「ついていくよ!絶対!!」

即答だった。彼女は間髪入れずに返事をしてきた。

「、、、俺は正直反対だ」

チーフが重い口を開く。

「戻るなら須藤1人でいい、だろ?須藤」

「いや、俺も残る。青太郎は1人で返す」

「なんだと?せっかくの機会をみすみす逃すと言うのか!?」

「俺に力を託した炎の悪魔は、力の均衡を保つために俺をこの世界に送り込んだと話した。一つの世界に能力者が2人もいてはバランスが取れない」

「煉太郎さん、本当にいいの?後悔しない?」

「、、、ああ、自分1人のために世界を破滅させる危険性があるのなら、俺は構わないさ」

俺の決意は青太郎との戦いの中で自然と固まっていた。

「おい、須藤煉太郎」

チーフと才華との会話のさなか突如として炎の悪魔が現れた。

「え、何このおっきい人?煉太郎さんの知り合い?」

チーフも驚いた様子で悪魔を見上げている。2人にも彼が見えているようだった。

「今は認識阻害の術をかける余裕がない。青太郎は俺の弟の氷の悪魔を取り込んで暴走してしまっているようなんだ。球体世界と平面世界を行き来できるようになっているのもそれが原因らしい。俺からの頼みだ。青太郎と氷の悪魔を引き離してくれ、、、」

「、、、どうすればいい?」

「青太郎と同じように俺を取り込むんだ。そうすれば打開策が見つかるかもしれない」

俺はその言葉に強い決意を感じた。彼は恐らく戻れなくなっても構わないのだろう。

「分かった」

「煉太郎さん!」

「須藤!」

「才華、佐藤チーフ、今までありがとうな。それじゃあ、、、またな、、、」

俺はそう言い残すと、炎の悪魔を取り込み、青太郎との戦いに臨んだ。

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