第14話 青太郎の甘言

「お前は宿舎で待機していろ!何があっても外に出るんじゃないぞ!」

佐藤チーフからの釘を刺すメールがあった。俺もそれに同意し、その旨を返信した。


「おい、ガードマン!出てこい!才華ちゃんをかどわかした罪は重いぞ!」

「お前のせいで才華ちゃんが、、、!」


外から俺への罵声が聞こえる。正直困惑していた、突然の才華の暴挙に、、、今まで通りに彼女の警護が出来ていたらどんなに幸せだっただろうか。一体なぜ突然、、、

「こんにちは、兄さん」

「!?青太郎!?お前は青太郎なのか!?」

「そうだよ、兄さん、僕が兄さんの弟の青太郎だよ」

突然目の前に青太郎と思わしき老人が現れた。

「久しぶりだね、元気そうで何よりだよ」

「俺もお前が無事に生きていることが嬉しいよ。でも、元の世界からどうやってここに、、、」

「僕は世界を自由に行き来できるようになったんだ。それでね、兄さん。僕は兄さんを救いにきたんだ」

「何、、、?」

「今なら僕は兄さんに寿命を与えることができるんだ。普通の人間と同じように歳を取って死ぬことができるんだよ」

「待て待て、突然すぎるぞ、、、」

「僕の力で兄さんと才華ちゃんを元の世界に送る。それなら兄さんはそこで老いることができる」

「おい、まさか、この一連の才華の行動は、、、」

「そうだよ、僕の氷の悪魔の力を使ったんだ。この力があれば人間の精神に干渉できる」

「、、、もし仮に俺が元の世界に戻って普通の人間と同じように生きられたとして、才華はどうなる?彼女は違う世界で過ごしていくから歳は取れないだろう?」

「それは彼女の問題だ。僕が本当に救いたいのは兄さんただ1人だよ」

「そんな勝手なことが許されてたまるか!?確かに元の世界に戻れば才華を有名人として知る人間とは会わなくて済むだろう。だが、、、そんな自分だけのために、、、それこそ暴挙だ、、、」

「何を言ってるの、兄さん。今までずっと生きてきて辛い思いを沢山してきただろう?それが解消されるんだよ。こんな機会は二度と、、、」

「お前は勘違いしている。俺は自分がどうなっても構わない。自分だけ救われようなんて思ってないぞ」

「そうか、それなら、、、」

青太郎は突然姿を消した。すると、、、

「きゃあぁ!」

「誰か、助けてくれ!」

外から聞こえる俺への罵声が悲鳴へと変わった。そしてすぐに青太郎が戻ってきた。

「何をしたんだ、青太郎!」

「僕は兄さんを救うためにこの世界を壊す。この平面世界が消滅すれば、兄さんも元の世界に戻らざるを得なくなる」

「くそっ、、、」

俺はチーフの指令を無視して外へ出た。


外は一面さながら氷の世界だった。建物は凍りつき、脚が氷漬けになって動けない人もいた。俺は殺さない程度の炎で加減しながら氷を溶かして回った。

「お前、ガードマンの須藤だな!才華ちゃんを返せ!」

「返せ、返せ!」

道中で何度も罵声を浴びせられた。構うもんか、俺はどうなっても、、、本当にそうなのか?俺は自分が助からなくてもいいなんて本当に思っているのか?もし自分が才華と共に平和な余生を過ごすことができたらどんなに幸せだろう。確かに才華は不老になってしまう。だが、青太郎の提案はよくよく考えてみると、とても魅力的だった。

「ダメだ、こんな考えじゃ、、、」

俺は雑念を振り払い、歩みを進めた。

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