第13話 1人のアイドルの暴挙

ジンライたちの襲撃から一夜明け、俺たちはいつもの日常に戻っていた。

「なあ、才華。悪魔の話なんだが、、、」

「ん、何のこと?」

才華は昨日の話を聞かなかったふりをしてくれていた。

「おはよう、才華ちゃん、須藤くん!今日も頑張ろー!」

神凪は早くも仕事に復帰していた。首の骨が折れていたという噂を聞いたが、、、

「大変だ!これを見てくれ!」

俺は駆けつけた佐藤チーフから週刊誌を受け取り、ページをめくる。すると、

「なんだって!?才華のデート現場を激写、だと!?」

それには俺と仲良さそうに、腕を組んでいるようにも見える写真が載っていた。

「お前、才華のオフの日の警護に行ってもらってたよな」

「でも腕は組んでないぞ、しかもこれ、接吻をしているような構図じゃないか!俺はこんなことしてない」

「ああ、俺たちはお前を信用できるからいいが、世間体は守り切れないぞ、これじゃ、、、」

才華も、、、

「煉太郎さん、、、」

「才華、すまない。俺が油断してたからこんな構図の写真を、、、」

「いいの、ちょうど煉太郎さんのお嫁さんになって引退するつもりだったから、、、」

「才華、何を言ってるんだ!俺はお前をでっち上げられた不祥事で引退なんてさせない!絶対にな!」

俺と佐藤チーフは週刊誌を発行している会社に怒鳴り込みに行った。

「何を言っても無駄ですよ。それにもう週刊誌は発売されちゃいましたしね、手遅れってやつ、ですよ」

「くそ、こんなの黙ってられるか!」

俺たちは路地裏の自販機近くで休憩していた。

「あ、あの人、才華ちゃんと写ってた、、、」

「間違いない、噂のガードマンだ」

「まずいな、おい須藤、お前は宿舎に戻れ。顔が知られてしまっているからな。このまま外にいるのは火に油を注ぐようなものだ」

「あ、ああ、了解だ」

俺は宿舎に帰り、テレビを見ていた。

「えー、アイドル才華、本名相馬才華さんは、一連の不祥事の責任を取って引退するという説が濃厚です」

「くそっ、俺には何も出来ないのか、、、」

ピンポーン!

苛立っているところにチャイムが鳴る。誰か来たようだ。

「こんにちは、須藤煉太郎さん。お久しぶりですね」

「てめえ、、、!」

そこにいたのは堀田だった。

「お前か!?でっち上げの記事を書いたのは!?」

「まあ、確かに、一部はそうかも知れませんが、あなたと才華さんが2人きりで街中を歩いていたのは事実でしょう?」

「それは、そうだが、、、」

「それなら、諦めて別の職でも探すことですね」

「いや、ダメだ、あいつを引退なんてさせない、絶対に、、、」

「そうですか、あなたは諦めないつもりですか。それなら、、、」

堀田は意を決したように言い出した。

「実は、この騒動は全て才華さん自身が発案したことなんです」

「何?」

「彼女は僕と協力して、あなたと結ばれるためにわざと引退する口実を作ったのです。あなたは信じないかも知れませんが」

「ふざけるな、信じるわけないだろう!そんなこと、、、」

「まあ、信じるか信じないかはあなたの勝手です。それなら本人に直接聞いてみるのはどうですか?」

「、、、行ってくる」

俺は謹慎中の才華の元へ向かった。

「ああ、堀田さんから聞いたんだね、そうだよ、これは私が仕組んだことなの」

「お前、、、なんでこんな、、、」

「私はね、煉太郎さんのことが好きなの。これだけは絶対に譲れない。本当の気持ちなの」

「才華、、、」

「だから、いっそのこと、煉太郎さんに私を引退させて欲しいの。ダメ、、、かな、、、」

「ダメに決まってるだろ!お前の所作1つで何人の人が職を失うことになるか分かってるのか!?」

「、、、やっぱり怒ってる?」

「当たり前だ!お前が引退したら露頭に迷う人間もいるだろう。少し頭を冷やしてこい!」

「、、、はい、ごめんなさい、、、」

俺も宿舎に戻った。すると、何とテレビには、、、

「私はガードマンの男性と恋に落ちました。私は彼を愛しており、アイドル引退をここに宣言します!」

映っていたのは衝撃発言をする才華の姿だった。

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